これほど悲惨な内ゲバ闘争が行われていたとは・・・。NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』で、改めてそう驚かされた人も多いことだろう。鎌倉幕府初代執権を務めた北条時政も隠居へと追いやられると、いよいよ時政の息子である北条義時と、時政の娘である北条政子が実権を握る。その一方で、時の将軍はどうも存在感が希薄だ。3代将軍の源実朝(さねとも)はどんな人物だったのか。「暴走気味だった2代将軍の頼家とは対照的に、実朝はおとなしい性格でした。ただ、もう少し内政が落ち着いた状態で将軍を任されていれば、思いやりあるリーダーとして活躍したかもしれません」と、偉人研究家の真山知幸氏はいう。『日本史の13人の怖いお母さん』(扶桑社)を上梓した同氏に、政子とのエピソードも交えて、実朝の素顔について解説してもらった。
太宰治も愛した「源実朝」
昭和の作家・太宰治は『人間失格』や『走れメロス』などの作品で知られるが、歴史小説にも挑戦していた。その名も『右大臣実朝』。鎌倉幕府第3代将軍の源実朝はどんな人生を歩んだのか。実朝の死後20年経ってから家来が振り返るという設定で書かれた作品である。
太宰だけではない。小林秀雄、大佛次郎、吉本隆明といった評論家や作家たちも、実朝を著述の題材に選んでいる。将軍でありながら歌人としても活躍した実朝。26歳で暗殺されるという悲劇的な運命もまた、後世の表現者たちを惹きつけているのかもしれない。
どちらかというと、意志薄弱なイメージをもたれやすい実朝。しかし、意外と一本筋が通ったところがあった。