失言問題で集中砲火を浴びている尹錫悦大統領(写真:YONHAP NEWS/アフロ)

(オセラビ:作家・コラムニスト)

 ちょっとした失言に、狂ったように執着する民主党と左翼メディア。誰でもたまには失言する。国家の指導者も同じである。ところが、大統領の失言の場合は、野党に与党内の政敵まで加勢して一斉に罵り始める。

 現在、韓国の政局は尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の卑語使用の失言によって、混乱状態に陥っている。「(米国の)国会でこの××たちが承認しなければバイデンは赤恥だ」という発言だ。

 民主党と相互協力しているメディアは、鬼の首を取ったように総攻撃に出た。野党支持者は「尹錫悦退陣」を叫び、反政府デモの規模は次第に大きくなっている。

 尹大統領の発言は、初めは失言と呼ぶに値するものではなかった。ことの発端はこうだ。

 尹大統領は、9月20日にイギリスのエリザベス2世女王の弔問を終えて、翌日、米国ニューヨークでの国連総会に参加し、基調演説をした。その後、米大統領と短い談笑を交わし、次の日程のために移動した。そのとき、外交長官などの参謀と歩きながら軽く交わした会話が、9月22日午前10時頃、MBC放送を通じて初めて報道された。

 問題となった発言はわずか5秒程度であり、多くの人々が移動する最中に交わした会話のため、雑音混じりで正確に聞き取るのは不可能だった。にもかかわらず、公営放送のMBCは「尹大統領が卑語使用」と、バイデン米大統領の名前も入れた字幕をつけて報道した。

 すぐさま民主党は尹大統領の暴言とそれによる国格毀損、バイデン大統領に対する卑下とそれによる外交惨事であると断定して、事態を扇動し拡大させた。

 筆者も、問題発言の映像を10回以上視聴したが、本当に尹大統領が、MBC報道の通り、国会議員や野党議員を示して「XXX(この野郎)」という卑語を韓国語で用いたのか、正確には聞き取れなかった。

 また、バイデン米大統領の名前を取り上げて、卑語で表現したのかも分からなかった。

 波紋が広がり、事態が大きくなるとすぐにノイズを除去した映像が再び上ってきたが、やはり明確には聞き取れなかった。

 もちろん、野党側と左派メディアは卑語を用いた確かな証拠と言って、政争の具にした。尹大統領の卑語論争は全国の主要メディア、時事トークショーの話題となり、収まることなく続いている。