9月26日、日本武道館行われた国葬のリハーサルの様子。自衛隊員が安倍晋三元首相の遺骨を運ぶ際の段取りを確認している(写真:ロイター/アフロ)

(作家・ジャーナリスト:青沼 陽一郎)

 きょう、安倍晋三元首相の「国葬」が行われる。

 報道各社が9月に実施した世論調査によると、安倍氏の「国葬」に「反対」「評価しない」は軒並み50%を超えて60%に達する勢いなのに、「賛成」「評価する」は20〜30%台に留まる。つまり、国民の半分以上が「反対」の中での強行だ。

 こうした背景に、安倍氏の襲撃事件から表沙汰になった統一教会(現・世界平和統一家庭連合)との関係があることは言を俟たない。

統一教会問題がこれだけ議論されている中で教団と関わり深い安倍氏の国葬

 安倍氏は昨年の9月、統一教会の創始者である文鮮明の妻で、現在の教団の総裁である韓鶴子が主宰する関連団体「天宙平和連合」(UPF)に、ビデオメッセージを送って、こう明言していた。

「韓鶴子総裁をはじめ、皆さまに敬意を表します」

 これを見た山上徹也容疑者(41)が、安倍氏の襲撃を決意したとされる。山上容疑者が、母親が統一教会にのめり込み、家や土地を売ってまで多額の献金をして家庭が崩壊したことから、教団への恨みがあった、と供述したことは大きな衝撃だった。ここから世間の注目はたちまち統一教会に向かい、そして政治家との関係が問われることになった。

 岸田文雄首相は統一教会との訣別を宣言して、被害者救済に関連省庁の連絡会議を設け、今月末までの無料電話相談窓口を置いた。

 だが、これは今日まで繰り返し指摘していることだが、被害者救済を実施していていながら、どうして加害者団体の首領をビデオメッセージで称讃する首相経験者を「国葬」にしなければならないのか理解できない。いうなれば、日本国民を食い物にする日本の敵に味方して、宣伝にも使われたはずの人物だ。「国賊」「売国奴」と呼ばれてもおかしくはない。そこに国費を注ぎ込んで、葬式を出す意味がわからない。だからこそ、国民の反感を招いているはずだ。それが世論調査で続落する内閣支持率に反映されている。