(馬 克我:日本在住中国人ライター)

 2022年5月、YouTubeに「王局拍案」という中国語のチャンネルが開設された。内容は主に時事問題に関する単独トークショーで、開設からたった4カ月でチャンネル登録者数は34万人を超えた。登録者は、主に海外在住の華人と、「翻墻(ファンチャン)」と呼ばれる、中国のインターネット検閲を回避する技術を駆使して中国国外のウェブサイトを視聴している中国国内の中国人だ。

日本メディアも注目する中国人ジャーナリスト

 このYouTuber(ユーチューバー)は、中国で名高い王志安(ワン・ジーアン)という人物である。1968年生まれで、現在は日本に住んでいる。

 9月10日、ルポライターの安田峰俊氏が彼にインタビューした記事が『文春オンライン』に掲載された。タイトルは、「日本にただいま潜伏中…国営放送CCTVの元編集委員『中国の池上彰』がぶちまける中国メディアの内情」だ。

 実のところ、王志安は2015年に中国国営テレビ局「CCTV」を退職している。その後、2017年、北京大衆紙『新京報』の人物インタビュー動画チャンネル「局面」でキャスター兼プロデューサーとなり、多くの中国人が知る人物となった。

 中国の厳しい世論統制の中、CCTVの調査記者出身の彼は、中国共産党の要求を遵守しながらも、秀でた調査力と質問力で可能な限り真実に迫る番組作りを行った。