駅も眠りから覚め始めた

 不通だった区間(会津川口と只見の間)には6つの駅がある。橋と違い、駅は整備にそれほど多くの時間はかからないためか、2022年6月の時点ではまだ開通に向けた準備の途中だった。

 次の2枚の写真は会津塩沢駅の2年前と今年を比較したものだ。2年前は線路を撤去し地面をならした状態だった。

2020年6月の会津塩沢駅

 今年の6月時点では、バラスト(レールの下にある砂利)がまかれレールが敷かれていた。またホームの両端にはワンマン運転用のミラーが設置されていた。ただ待合室の窓や入口はベニヤ板で閉じられたままだった。

2022年6月の会津塩沢駅

大赤字の只見線がなぜ復活できたのか

 只見線全線開通予定を発表した2カ月後の2022年7月28日、JR東日本は赤字路線のデータを公表した。平均通過人員が1日2000人未満の線区を対象にしたものだ(2019年度の実績)。地方ローカル線の赤字が経営を圧迫する窮状を訴え、今後の方針について地域と議論を進めたい、という意図を持ったものだ。

 このデータの中には只見線も含まれる(不通区間を除く)。1日の平均通過人員は「会津若松~会津坂下」が1122人、「会津坂下~会津川口」が179人、「只見~小出」が101人と、2000人を大幅に下回る。この3区間の合計収支は年間18億8000万円の赤字だ。不通になる以前も赤字である点で大きな違いはなかった。

 とすると、莫大な費用をかけて鉄橋などの復旧工事を行うべきかどうか、という議論が生まれるのは当然だ。不通になった2年後の2013年にJR東日本が発表した復旧費用の概算は85億円、工期は4年以上となるというものだった。「不通になった区間はそのまま廃線」という例は、全国各地にあり、只見線がそういう運命をたどる可能性もあった。

 これまで不通区間(会津川口と只見の間)は代行バスが運行されていた。その区間がそのままバス路線になってしまうこともあり得たのだ。

会津川口-只見間を運行する代行バス。列車より所要時間がかかる(2020年6月撮影)