(水野 亮:米Teruko Weinberg エグゼクティブリサーチャー)
ブラジルでは大統領選挙の演説中に襲撃
安倍晋三元首相の暗殺事件の様子を映したニュース映像を見た。背後数メートルの至近距離から撃たれたシーンだが、中南米諸国や米国に長く住む1人として、その警備の甘さには目を疑った。
元首相が銃撃により亡くなるという今回の事件は、かつて「水と安全はタダ」と言われた日本のセキュリティーに対する意識に少なからず影響を与え、要人の身辺警護について関心が高まるだろう。対象は政治家だけでなく、企業経営者なども含まれるべきだ。一方でそれは社会が負担するコストが増えることも意味する。
今回は日本よりも高いセキュリティーレベルが求められる中南米諸国や米国の状況をお伝えしたい。
まずは中南米の大国ブラジル。激しい経済格差を背景に治安の悪さが指摘される。2016年のリオデジャネイロ五輪では、日本からの観戦者にも強く安全対策が呼びかけられたのは記憶に新しい。
現在のボルソナーロ大統領は2018年の大統領選挙の演説中に暴漢に襲われ、腹部を刺された。幸い命に別状はなかったが、腸に深い傷を負い、手術を伴う全治3週間の入院が必要となった。今年初めにボルソナーロ大統領は腸閉塞で入院したが、襲撃事件の後遺症と言われている。