小嶌氏 大なり小なり、取り組みを始めています。もはや環境対策はどの地域も無視できないテーマとなっており、海に面していない地域でもプラごみの流出を止めるための河川調査などを行っています。実は、海に流出するごみの8割は陸地から流れてきたものです。川や水路を通って海に行き着くため、海に面していない地域も「自分ごと」として捉える必要があります。

小田 小嶌さんが見てきた各自治体の取り組みについて、具体的にお話しいただけますか?

小嶌氏 県単位でよく実施されているのが河川調査です。マイクロプラを含め、どれくらいの量のごみが出ているのかという実態を把握します。その他に大規模なクリーンアップキャンペーンを実施したり、広報ツールなどで地域美化に関する啓発活動を行い、どうすれば消費者の行動を変えられるのかという実験をしたりしています。

小田 啓発活動はよく見掛けますが、その効果を測るのは難しいように思います。

小嶌氏 明らかに効果があるという取り組みを見つけ出すのは難しいです。例えば美化啓発のポスターを何万枚張ったから、ポイ捨て率がこのくらい下がりましたというようなことは、測定のしようがありません。「この広告を見たことはありますか」といった問いを含んだアンケートで意識調査するのが精いっぱいのケースもあります。

小田 ピリカ社が、自治体と一緒に取り組みを行うこともあるのですか?

小嶌氏 G20大阪サミットで共有され、環境省が主導する「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」に基づいて行われる各地の実験的な取り組みなど、さまざまな対策や事業に関わっています。

解決策は二つしかない

小田 ピリカ社のサービスは、ごみの定量化に関するものが多いと見受けられるのですが、アプローチとしては「そもそも生活の中でごみを出さないようにするための定量化」と、「出てしまったごみを自然に流さないための定量化」の二つという理解でよいでしょうか?

小嶌氏 ごみ問題の解決策は基本的に二つしかありません。「ごみの流出量を減らす」と「ごみの回収量を増やす」です。今、地球が汚れていっているのは、ごみの回収量よりも流出量の方が圧倒的に多いからです。回収量も流出量もきちんと測定した上で回収量の方が多い世の中をつくれば、理論上ごみは地球から減っていきます。

 私たちは「流出量を減らす」「回収量を増やす」を、さらに分類して四つの軸で考えています。それは①流出量を測る取り組み、②流出量を減らす取り組み、③回収量を測る取り組み、④回収量を増やす取り組み──です。この四つをすべてITや科学技術で効率化し、世界中で実施される取り組みにすることを目指すのがピリカ社です。

小田 自治体との取り組み事例について、具体的にお話しいただけますか?

小嶌氏 ごみ拾いSNS「ピリカ」の活動を可視化しデータ管理できる「見える化ページ」の自治体版を導入いただいています。ITや科学技術を用いると聞くと、さも効率の良い、夢のような解決策がイメージされますが、私たちの知る限り、最も着実な解決方法はごみをきちんと拾ったり回収したりすることなのです。清掃活動から逃げることはできません。

 ならば、どのようにして多くの人たちに、ごみ拾いや回収活動に参加してもらうかを考えることが大切です。ごみ拾いSNS「ピリカ」はその観点から作ったアプリで、世界100カ国以上、延べ200万人以上に参加いただき、累計のごみ回収量は2億個を超えました。