2050年までに海を漂うプラごみの総重量は魚の総重量を上回るといわれていますが、実際に私がインドネシアの海で見た光景は既にその片りんを表していました。プラスチックと魚は密度が異なるので、同じ重量にそろえると魚の周りをごみが覆い尽くすような状態になります(写真)。これを見ると、海を漂うプラごみの総重量が魚の総重量を上回るということが、どれだけ深刻な問題であるかが分かります。

300gの魚と300gのプラごみの大きさを比較

 海洋ごみが問題視される理由は、もちろん海洋生物への影響です。ごみが絡まったり、飲み込んで窒息してしまったり、胃袋に詰まって栄養が取れずに餓死してしまったりするといった影響が懸念されています。

 最近の研究では、海洋ごみが植物性プランクトンの発育に悪影響を与えるという結果が出ています。植物性プランクトンはCO2を吸収して酸素を排出しますから、それに影響があるということは気候変動にもつながっていることが分かります。

 ただし人体への影響については、まだはっきりとした結果が得られていないのが現状です。プラスチック自体は、飲料や食品の容器に使われているようなものであれば無害です。細かい破片にして飲み込んだとしても数時間以内に体外に排出されます。

 問題なのは車の部品など、口に入ることを想定していないプラスチックです。それらは強度を増したり、着色のために有害な化学物質を加えたりする場合があり、そうしたプラスチックが小さくなって自然界に散らばり、巡り巡って人体に入ったときの影響はまだ明確には分かっていません。無害なプラスチックでも自然界の有害な成分を吸着し、濃縮した状態で生物に吸収されてしまうケースもあり、問題視されています。

 このように、影響が読めない部分もあるのが海洋プラ問題なのですが、一つだけ言えるのが不可逆的であることです。一定のラインを超えてしまうと、もう後戻りできないタイプの問題です。

 だから国際的に重要な課題として扱われていますし、問題が大きくならないうちにできることを全力でやろうというのが国際社会の合意なのです。

どの地域も無視できない

小田 2019年に大阪で開かれた20カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)では、「G20海洋プラスチックごみ対策実施枠組み」が採択され、海洋プラごみ問題の解決に向けた取り組みに各国が強くコミットメント(決意)しました。環境対策は、すべての自治体や企業が避けては通れないテーマとなっています。小嶌さんの目には、日本の自治体の現状はどう映っているのでしょうか?