2018年3月、東京都で当時5歳の女の子が虐待死する事件が起き、児童虐待が社会で広く認識される契機となった。どうしたら児童虐待をなくすことができるのか。児童虐待が起きる原因や要因、そしてその解決策や予防策について、市区町村議員の超党派の会が出版した書籍を基に紹介する。(JBpress)
※本記事はPublicLab(パブラボ)に掲載された「児童虐待防止のために自治体ができる子育て支援とは」を再構成したものです。
関東若手市議会議員の会 児童虐待防止プロジェクトチーム
東京都目黒区議・田添麻友
「風化させないために」。この表現は被災地支援や大きな事故・事件が発生してから数年後に、当時の重大さを思い起こす際によく口にされます。東京都目黒区で2018年3月、船戸結愛ちゃん=当時(5)=が虐待死する事件が起きました。父親(正確には継父)は傷害や保護責任者遺棄致死などの罪に問われ、懲役13年の有罪判決が確定しました。母親も保護責任者遺棄致死罪に問われ、懲役8年となりました。
私たち「関東若手市議会議員の会」(通称・若市議)の児童虐待防止プロジェクトチームは、この事件、そしてこれまでに発生した多くの児童虐待死事件を風化させてはいけないと考えています。どうしたら児童虐待をなくすことができるのかを調査・研究してきた私たちに、目黒虐待死事件は無力感を突き付けましたが、同時に児童虐待が社会で広く認識される契機となりました。
しかし、それによって社会が大きく変わった実感はまだなく、時間がたてば、その他の社会課題の中に埋もれてしまいがちです。どの地方自治体でも恐らく、あの事件が発生した2018年は児童虐待に関する議会質問が多かったと思いますが、今はあまり取り上げられていないことでしょう。
児童虐待の解決策や予防策を書籍に
そこで、私たちは『子どもの虐待はなくせる!』(けやき出版、2021年)という書籍を出版することにしました。私たちの活動を一冊の本にまとめ、広く自治体や議員の方々に私たちの思いを伝えるとともに、児童虐待が起きる原因や要因、そしてその解決策や予防策について、お届けしたいと考えたのです。
「若市議」は、市区町村議選に35歳以下で初当選した、現在45歳未満の議員で構成する超党派の会です。地域や党派を超えてさまざまな政策課題について勉強し、議論を交わし、各自治体の政策論議に生かしています。プロジェクトチームは児童虐待を防ぐために地方議員として何ができるのか、視察や調査・研究を行い、提言することを目的として、2015年11月に活動を始めました。
本書は、プロジェクトチームのメンバーが児童虐待防止の最前線で奮闘されている民間の方々、東京都や児童相談所といった行政の方々、児童養護施設や自立援助ホーム、里親など児童養護に関わる方々、大学をはじめとする研究機関の方々、虐待被害の経験者の方々など、多くの皆さんからお話を伺い、それらを踏まえて議論した成果をまとめたものです。
虐待を生まない豊かな子育て環境をつくること、また本書をきっかけに児童虐待防止に向けた新たな議論が活発化することが、今回の出版プロジェクトの目的です。