滞留しているコンテナの前に集まるトラックドライバー。彼らのストライキによって韓国の物流は大混乱に陥った(写真:AP/アフロ)

(田中 美蘭:韓国ライター)

 日本をはじめ、海外でも報じられた韓国のトラックドライバーによるストライキ。賃金や待遇の保障を求めて6月7日に始まったストライキは、「無期限」として実施されたが、8日目の14日にひとまずの解決を見て終息した。

 だが、ストライキの終息イコール解決ではない。1週間にわたるストライキで韓国の経済界が被ったダメージは相当に大きく、韓国社会の根深い課題を浮き彫りにした。

 民主労働組合主導の元で行われた今回のストライキには、労組加入者の30%に当たる約6600人のトラックドライバーが参加したと言われている。その影響は多方面へと及んだ。

 物流の停滞はもちろんのこと、今回は企業向けの物流運送が特にダメージを直に受けた。鉄鋼メーカーのポスコや現代自動車、石油化学工場などでは、部品の調達や出荷の遅れが生じたため、一部の工場で生産ラインを減らしたり、操業が停止したりする事態へと追い込まれた。

 国内のみにとどまらず、海外への出荷にも遅延が生じるなど、ストライキが長引くについて影響が拡大していったのは言うまでもない。

 影響は飲食業にも波及し、アルコール類など飲料が工場から出荷できず、飲食店への納品が大幅に減るといったことも起きた。

 韓国政府は今回のストライキによる損失は1600億円相当に上るとの見解を示し、ストライキの長期化を懸念するとともに、労組に対して早急にストライキをやめるよう呼びかけた。

 労組の頑な姿勢に先行きを心配する声も多く上がっていたが、6月14日に国土交通部(日本の国土交通省に相当)と交渉した後、ストライキの終了が宣言。翌15日からは、ストライキに参加していたドライバーも業務に復帰することとなった。