カタールから14年間で1400万ドルの寄付金
功成り名を遂げた将軍がなぜ外国の代理人を演じたのか。どうやらその背景はワシントンのシンクタンクそのものの存在にある。
ワシントンにはブルッキングス研究所のほかリベラル系では戦略国際問題研究所(CSIS)やセンター・フォア・アメリカン・プログレス(CAP)、カーネギー国際平和基金などがある。
保守系ではヘリテージ財団やアメリカン・エンタープライズ政策研究所(AEI)がある。各分野における最高の研究者がこれらシンクタンクに集まる。
これら研究者たちの研究成果は連邦政府はじめ学術機関、民間企業で政策として採用される。外国政府や企業がそれに目を付けない方がむしろ不自然だ。
政策提言がさらに進めば、米連邦政府への働きかけに発展する。
つまり政策実現のためのロビー活動になっていく。ただシンクタンクは外国政府や企業の代理人としてロビー活動を行える外国代理人登録はしていない。
ところがシンクタンクの財政基盤を支えているのは「Donation」と称する外国からの寄付金だ。研究費として出される「紐付きでないカネ」だ。
紐付きでないとはいえ、実際にはこの寄付金が往々にしてシンクタンクと連邦政府の微妙な関係でロビー活動に使われてしまっているのである。
フレッチャー法律外交大学院のダニエル・ドレズナー教授はグレーゾーンについてこう指摘する。
「シンクタンクに流れ込むカネについては、民間企業による政治資金のように厳しい規制や申告制度のようなものがないのが実情だ」
「どこからどこまでが提言で、ロビー活動なのかは線引きがはっきりしない」
「さらに主要シンクタンクにとって外国政府や企業からの寄付金は研究・運営のコーナーストーン」
「ブルッキングス研究所の場合、過去14年間、ドーハに同研究所直属の中東研究センターを置いていた。同センターは2019年に閉鎖されるまで1400万ドルの寄付金をカタール政府から得ていた」