50歳を過ぎたらスマートな妥協を

 社内政治とコンプライアンスと、日々のタスクに追われて、肉体と精神をすり減らすおじさんたちにこんなことを言うのは残酷だ。

 しかし、想像してみてほしい。これは、「年収1000万円以上のイケメンじゃないと結婚しない!」と宣言している、プライドが高い40歳目前の独身女性へアドバイスするのと似ている。

・20代のころモテた感覚が今でも忘れられない
・自分が一番かわいく見えた時代の髪形と服装をずっと続けている
・お見合いサイトでは、相手の年収や顔しか見ていない
・40歳過ぎて結婚・出産した女性芸能人を見て「まだ大丈夫」と思っている
・いつも強がっていてかわいげがない

 こういう女性がいたら、思わず「現実を見て、ちょっとは妥協しなさいよ」と言いたくなるだろう(今、職場でそんなこと言ったら、大変なことになるが……)。

 同じように「オレは知識も経験もあるから、報酬の高い、やりがいのある仕事じゃないとやらない」と言ったところで、50歳を過ぎたら贅沢は言っていられない。

 どちらにも必要なのは「スマートな妥協」だ。

「なんか、若月さんの話を聞いていて、自分も心配になってきた。50代、60代になって今の働き方が続けられるとも限らないし。この先どうなるかな」

 いきなり不安そうに暗くなるS氏。ソバージュ頭の人が震えていても、あまり同情心がわいてこない。

 人生は長くなった。もう十分苦労してきたつもりでも、本当の困難はこれからかもしれない。いや、本当のお楽しみはこれからか。

 バブル世代の中高年男性がこれからどんな“DX(「大胆な」トランスフォーメーション)”を遂げていくのか、後に続く者としてこれからも見守っていきたい。