写真:WavebreakMedia/イメージマート/写真はイメージです

日本スポーツ界の「育成」が過渡期を迎えようとしている。スポーツという「勝敗」をわける競技性を、どの段階で、どのくらい重要視するのか。例えば、海外のトップリーグでは「育成段階では勝利を一番手に置かない」などと指摘される。

果たしてその実は――? 

プロサッカー選手・岡崎慎司が日本スポーツ界の「育成」や「場所」「戦術」について、専門家を招き対談をする「dialogue w/(ダイアログウィズ)」で、ドイツで長きにわたり指導をするドイツサッカー協会A級ライセンス保持者・中野吉之伴氏を招いた。

トップ選手の目線、育成指導者目線、対談から見出した「育成の在り方」のヒントを、中野吉之伴氏が寄稿する。

なぜ彼・彼女は大成しなかったのか?

大人になるってなんだろう?

「人によってそんなのまちまちだよ」と言われたらそれまでだが、「自分の頭で考えて、自分の心で感じて、自分の足で動いて、自己肯定感があって、苦しいことにも立ち向かえて、周囲への配慮もできて、選手としても、人間としても自立して生きていける」ような大人であってほしいという願いは少なからず多くの人にあるのではないだろうか。

子どもたちはやがて少年・少女となり、そして成熟を重ねて大人へと育っていく。

でも誰もがみんな、僕らが思い描いているような《大人に》なっていくのかというとそういうわけではない。

育成という枠で僕らは「どうすれば彼らを理想的に育て上げることができるのか」と考えがちだけど、でも「僕らが子どもたちを育てるんじゃない」という事実を正しく知っておくことが必要ではないか。

「子どもたちが正しく育つための環境ときっかけ適切なアプローチとタイミング」が大切なのだ、と。

先月、日本サッカーを代表するFWである岡崎慎司の配信する「dialogue w/」に招かれ行ったLive配信対談(「マリオ・ゲッツェに見る『育成でできる限界』」)でもそうした話があった。

自分が殻を打ち破り成長するために求められるものは何なのか? 

《サッカープレーヤーとしての才能がある》とされながら大成せず、気が付くと名前が聞かれなくなっていたとなってしまうのはなぜなのか。

要因は様々あるだろうが、その中で次のポイントはとても重要ではないかと思われる。