アメリカは50歳以上、イギリスは75歳以上

 ここで、欧米諸国を中心に各国が始めた4回目接種の内容をみてみよう。接種の対象は、基本的に高齢者や基礎疾患を持つ人などだ。だが、その中身は各国でかなり異なっている。

【イスラエル】
 イスラエルは、追加接種から4カ月以上経過した60歳以上の人、18歳以上のハイリスク者(妊婦等を含む)、免疫不全者、療養施設入所者、医療従事者、ハイリスク者の介護者、職業上曝露リスクの高い者が接種できる。

 同国は4回目接種を開始した2022年年始時点で、オミクロン株の感染拡大防止は困難との認識を持っており、重症化リスクの高い人を接種対象としている。あわせて、医療従事者や介護者にも接種することで、医療・介護の逼迫を防ぐ狙いもあるものとみられる。

【イギリス、カナダ、フランス、ドイツ】
 イギリスは、追加接種から6カ月以上経過した75歳以上の人、介護施設居住の高齢者、12歳以上の免疫不全者が対象。

 カナダは、追加接種から6カ月以上経過した80歳以上の人、長期ケア施設や共同居住施設に入居する高齢者に接種を推奨。各地の当局は70─79歳の人への提供も考慮できる。

 フランスは、3月半ばに追加接種から3カ月以上経過した80歳以上の人と免疫不全者を対象とした。その後、3月末には追加接種から6カ月以上経過した60─79歳の人も対象に加えた。

 ドイツは、追加接種から3カ月以上経過した 70 歳以上の人、5歳以上の免疫不全者、介護施設入所者、追加接種から6カ月以上経過した医療・介護従事者を対象に接種を推奨している。

 これらの国に共通しているのは、対象者を比較的高齢の人などに限定している点だ。その背景には、EUの医薬品規制を行っている欧州医薬品庁(EMA)のスタンスがあるものとみられる。

 EMAは1月11日、3回目接種から4カ月程度の短い間隔で4回目接種を実施することに懐疑的な姿勢を示していた。理由として、3~4か月ごとにブースター接種を実施した場合、免疫機構に過剰な負荷がかかり、十分な免疫反応が得られなくなること。継続的なブースター接種の実施は、住民の疲弊につながる危険性があることを挙げている。

 このスタンスは、各国で4回目接種が始まった後も変わっていない。EMAは4月上旬、正常な免疫の60歳未満の人に対する4回目接種は現時点では時期尚早、との見解を示している。

【アメリカ】
 アメリカは、追加接種から4カ月以上経過した、50歳以上の人、中等度から重度の免疫不全者などが接種しうるとしている。

4回目の接種を受けるアメリカのバイデン大統領(写真:ロイター/アフロ)

 アメリカの医薬品規制を行っている食品医薬品局(FDA)は、イスラエルのデータから60歳以上への4回目接種で重症化予防の効果を確認した。FDAの諮問委員会の委員長は、これを拡大して、3回目接種で明確な効果が出ている50歳以上を対象とするのは妥当と判断したと報じられている。(*2)

 ただし、同委員会の一部のメンバーからは、50─64歳の人の4回目接種の有効性についてのエビデンスがないとして、接種推奨の根拠が不十分ではないか? との疑問の声も上がっている。

(*2)“FDA expected to OK additional COVID-19 booster shots for adults over 50 next week”(CNN/2022年3月26日)

【日本】
 日本では追加接種から5カ月以上経過した60歳以上の人、18 歳以上で基礎疾患を有する人、その他重症化リスクが高いと医師が認める人が対象となった。基礎疾患を有する人として、慢性の呼吸器の病気など14の病気や状態の人や、基準(BMI30以上)を満たす肥満の人が示されている(BMI30の目安は、身長170cmで体重約87kg、身長160cmで体重約77kg)。

 60歳以上という年齢範囲については、これまでのコロナによる年代別の重症者割合などが判断のベースになったようだ。

 こうして各国で4回目接種が始まっているが、今回は感染予防よりも重症化予防を主な目的としたものであるため、接種により感染が立ちどころに縮小するといったわかりやすい効果は得られそうもない。対象者の間で、4回目接種がどのように進んでいくかも見通しにくい。