ロックダウンされた中国・上海(2022年4月20日、写真:ロイター/アフロ)

(福島 香織:ジャーナリスト)

 23年の歴史がある中国語インターネットメディア「多維新聞」が4月26日、突然閉鎖した。この背景を考えてみたい。

 多維新聞は、もともと米国ニューヨークに拠点を置く独立系中国語メディアとしてスタートした。設立者は在米華人メディア人、何頻である。

 何頻は共産党中央のハイレベルな内幕情報にやたら詳しく、第16回党大会、第17回党大会における政治局常務委員会人事などをきわめて正確に予想していた。当時から党中央に太いネタ元をもっている、と言われていた。そのネタ元は江沢民系、解放軍系だとも。

 だが2009年に香港の企業家、于品海に買収され、本部をニューヨークから北京に移転させ、中国の大外宣(対外プロパガンダ)用メディアとして位置づけられるようになった。

 拙訳『中国の大プロパガンダ』(何清連著、扶桑社新書)を読んでいただければわかると思うのだが、この大外宣戦略は対外的に中国共産党に都合のよい世論工作、世論誘導の任務を担う。対象は在外華人や外国人だけでなく、国内の中国知識人や都市民たちも含む。知的な彼らは、中国の官製メディアが共産党の宣伝機関であり、日付と天気予報以外はほとんどあてにならないとわかっている。だから、ニュースに関しては、外国メディア、在外の独立系メディアを好んで読むのだ。