(英エコノミスト誌 2022年4月23日号)

ガソリン価格の急騰は収まったが・・・(写真は3月13日、AP/アフロ)

 中央銀行はインフレ率を低位安定させることにより景気に対する信頼感を喚起することになっている。

 米国の連邦準備理事会(FRB)は、身の毛がよだつような制御不能に陥った。3月の消費者物価指数(CPI)上昇率は前年同月比8.5%に達し、1981年以来の高率を記録した。

 首都ワシントンでインフレの観察といえば、かつては古ぼけたオフィスで働くオタク職員の独壇場だった。

 今では米国民の2割近くがインフレをこの国の最重要問題に挙げている。ジョー・バイデン大統領はガソリン価格を抑制しようと石油の戦略備蓄を一部放出した。

 民主党はインフレ高進の責任を問える敵役を探しており、欲張りな企業経営者やウラジーミル・プーチン氏などをやり玉に挙げている。

制御できなくなったインフレ

 しかし、インフレを止める道具を持ちながら、それを適切なタイミングで使えなかったのは、ほかならぬFRBだ。

 おかげで大きくて豊かな国々では、中央銀行がインフレ目標政策を導入してきた過去30年間で最悪の景気過熱が生じている。

 良い知らせは、インフレがようやくピークを越えた可能性があることだ。

 だが、2%というFRBのインフレ目標の達成はまだ遠い先の話であり、FRBはこれから苦渋の選択を強いられることになる。

 米国の政策立案者を擁護する向きは、前年同月比のインフレ率がユーロ圏で7.5%、英国でも7%に達していることに言及し、インフレ高進は特にロシアによるウクライナ侵攻以降激化したコモディティー(商品)価格急騰がもたらした世界的な問題だと主張している。

 ユーロ圏のインフレの4分の3近くは、エネルギーと食料の価格急騰によるものだ。