4年連続で国連・北朝鮮人権決議案の共同提案国に参加しなかった文在寅政権(写真:YONHAP NEWS/アフロ)

(羽田 真代:在韓ビジネスライター)

 国際人権団体、ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)は4月3日、文在寅(ムン・ジェイン)政権が4年連続で国連・北朝鮮人権決議案の共同提案国に参加しなかったことについて、「文在寅大統領の対北朝鮮政策は非人道的で絶対的恥だ」と強く非難した。

 国連・北朝鮮人権決議案の共同提案は2005年に始まった取り組みで、日、米、英など60カ国が参加している。今年採択されれば18年連続採択となる。

 同団体は、文大統領に対して一度だけ「大統領(president)」という肩書をつけたことがあるが、文政権の非人道的な政策を問題視し、その後は5回連続で肩書を省略して“文(Moon)”と呼び捨てにしている。

 冒頭の非難の他にも、「文が政治的目的のために北朝鮮の人権を投げ出した」「北朝鮮問題に対して、最小限の原則を守ってさえいれば大統領職を退任する際に多少なりとも尊敬されていただろうが、そうならなかった」「人権問題について真剣に取り組んできたという彼の主張を嘲弄する」と軽蔑しており、文氏に対する強い嫌悪感が見て取れる。

 HRWは29の非政府組織(NGO)とともに、3月24日付で文大統領宛てに、北朝鮮人権決議案の共同提案国への参加を促す書簡を送付した。公開書簡の扱いで送付したところを見ると、文大統領の任期中に、何としてでも参加させたかったのだろう。

 だが、公開書簡の形で呼びかけても、文政権は完全無視を貫いた。

 文政権が共同提案国に参加しない理由は、周知のように、彼が「従北」を貫いているからだ。まがりなりにも、文大統領は過去に人権派弁護士として活躍していた人物だ。本来であれば、反人道的政策を取り続ける北朝鮮に黙っていられるはずがない。

 しかし、北朝鮮が北朝鮮人権決議案に対して、「我が国に人権問題は存在しない。全面的に拒否する」と主張している以上、従北姿勢の文大統領も北朝鮮の主張に口を揃えるしかない。

 また、文政権は「媚中」でも知られている。中国も、「人権を口実に他国に圧力をかけることは反対だ」として、北朝鮮人権決議案に参加していない。文政権にとって絶対的なツートップである北朝鮮と中国がこのように主張しているのだから、これが誤った主張であっても賛同するしかない。