紛争が起きても実質的に中立を守ってきた日本だが、今回、岸田首相はその強みを捨てた(写真:つのだよしお/アフロ)

 一時はウクライナ侵攻直前の価格に関して、対ドルで50%の下落を見たルーブルだが、現在ではほぼ侵攻前の水準を回復した。

 ウクライナ危機は、今週に入ってロシアとウクライナの和平交渉が本格化するのかどうかに注目が移り始めた。3月29日付拙稿「中間選挙の見返りが少ないウクライナ、深入りを避けたいバイデン大統領の誤算」に書いた通り、フランスのマクロン大統領も英国のトラス外相もその方向で動いている。

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◎「中間選挙の見返りが少ないウクライナ、深入りを避けたいバイデン大統領の誤算」(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/69484)

 また、ドイツのショルツ首相も、マクロン大統領の和平工作を支援していると一部で報道されている。ブリンケン米国務長官はウクライナ危機の長期化を避けるべく、仲介国探しを進めてきたとの噂がワシントンでは聞こえる。欧州の戦争における主役が米国から欧州3主要国に動いた印象だが、世界にとっては悪いことではない。

 現時点で、北大西洋条約機構(NATO)加盟国ながら、歴史的な経緯もあって中立性の強いトルコが、既にロシアとウクライナの双方と話し合いを始めている。ゼレンスキー大統領は父方のユダヤ人の血を持っていることもあり、イスラエルにも期待している。

 この両国またはどちらかが仲介の表舞台に出るとしても、国連総会での対露避難決議で棄権した中国とインドという大国のサポートが必要との見方は、英仏の国際政治の専門家の間では有力である。特に、国会演説で日本を持ち上げたゼレンスキー大統領は、中国に対する期待がとても強いと言われている。

 プーチン大統領が求め始めたと言われる「朝鮮半島型の終結(ウクライナをドニエプル川で分割)」にゼレンスキー大統領が簡単に応じるとは思われず、和平交渉は長期化が予想される。和平交渉期間に停戦を実現できるのかどうかも、世界経済への影響を考えれば要注目である。

 ただ、SWIFTからのロシアの銀行締め出しや小売店舗、工場閉鎖などの金融・経済制裁がロシアに与えたダメージは非常に大きく、仮に和平交渉が順調に進んだとしても、世界経済への影響はかなり長引くこととなるだろう。

 ところが、ここで世界の注目を集めているのは、ロシアではなく日本である。