3月9日、バイデン大統領は「デジタル資産の責任ある開発を確保するための大統領令」に署名した。
厳しい内容となることを恐れていた暗号資産(仮想通貨)業界は、「ホワイトハウスがデジタル資産を米国のイノベーションとして認識したことを称賛する」(米国最大の暗号資産取引所コインベースの最高政策責任者、Shirzad氏)と一様に歓迎し、大統領令が求めている米規制当局の調査などに前向きに協力するという発言が相次いだ。
暗号資産業界は、ワシントンDCにいるロビイストの数を2018年の115人から2021年には320人とほぼ3倍に、ロビー活動費も220万ドルから900万ドルと4倍強と大幅に増やしている。その成果が表れたという声も聞かれる。
ただ、今回の業界のポジティブな反応について、米最大手自動車メーカーでロビー活動を長年してきた知人は筆者にこう言った。
「ワシントンの政治的な駆け引きをわかっていない」
彼女によれば、「今回の大統領令は、中間選挙に不安を強めるバイデン政権が暗号資産に対するネガティブな印象が出るのを避けるための先送りを考えたもの」と受け止めるべきだとのことだ。
今回の件は日本にも影響するため、大統領令と、それが示す暗号市産業界の状況について敷衍しておきたい。