ウクライナ国境付近のロシア軍(写真:AP/アフロ)

 2021年9月にビットコインを法定通貨としたエルサルバドルが、ビットコインを裏付けとするドル建て国債を発行する。発行額は10億ドル、期間10年、金利6.5%とのことらしい(「らしい」と書いているのは、エルサルバドル政府や主幹事となるであろう組織はこの情報を発信しているものの、発行目論見書などが出されたわけではないため)。

 エルサルバドルはドルも法定通貨にしているので、ドル建て国債を発行することで得た資金は自国内の財政出動にも利用できる。発行時期は早ければ3月上旬の予定だ。

 ただ、昨年9月に法定通貨とした後もビットコインでの取引を受け入れる企業(特に消費関連の中小・零細企業)が少ないことを考えると、ドル建て債の発行は国内でドル建てのプロジェクトを増やすことにつながり、一段とビットコインの普及を遅らせる可能性がある。

 また、エルサルバドルに資金支援しているIMF(国際通貨基金)は、今も130億ドルの援助交渉を同国としており、ボラティリティの高いビットコインを法定通貨、つまり同国の決済通貨として利用することに反対している。

 ビットコインのボラティリティの大きさは、法定通貨となった後の動きを見れば明らかだ。法定通貨となった9月7日の4万6894ドル/ビットコインから、11月8日にはピークの6万7582ドルまで上昇したものの、2月24日には3万6999ドルと大幅下落している。

 果たして、エルサルバドルのビットコイン債発行は、世界的には受け入れ態勢に入ったとは言えない暗号資産の普及に資するのか、それとも現段階では見えない問題が露呈し、規制の強化というブレーキがかかるのか、注目されるところだ。

ビットコイン債の仕組みと資金使途

 ここで言うビットコイン債は、英語では「Bitcoin Backed Sovereign Bond」と呼ばれており、現時点で同国が保有している、または同国が万一の場合には購入するビットコインの裏付けを担保とする(ドル建ての)エルサルバドル国債のことだ。同国は、この債券の発行によりドルを受け取り、ドルで元利払いする。

 通常発行される無担保のエマージング国債(普通債)としては、エルサルバドル国債は格付機関によってCCCまで格下げされており、最低ランクに位置付けられる。昨年の利回りは17%程度だ。従って、6.5%のビットコイン債が実現すれば、金利が3分の1程度にまで低下する。

 エルサルバドル政府によれば、発行額10億ドルのうち、5億ドルはビットコインの購入に充て、残りの5億ドルは建設計画が進む無税のビットコイン・シティに充てる予定だ。そこでは、火山国の利点を利用した、地熱エネルギーによるビットコインのマイニングも行うという。

 ブレケ大統領は、この都市への移住希望者に対して、一定水準の投資額を超えれば市民権も与えると発表した。投資額によって永住権を与える国は世界に少なからず存在するが、市民権を与えるのはエルサルバドルが初めてだろう。