韓国の若者の間では高級ブランド熱が高まっている(写真:Penta Press/アフロ)

(オセラビ:作家・コラムニスト)

 2021年末、興味深い映画が公開された。リドリー・スコット監督の「ハウス・オブ・グッチ(House of Gucci)」だ。

※以下、ネタバレになるので、まだ見ていない方はご注意ください

 イタリアの高級ブランド、グッチの企業内で実際に起きた殺人事件を基にした映画である。高級ファッションブランドの代名詞ともいえるグッチ一族の衝撃的な殺人事件──。派手なファッション業界に隠された人間の強欲さが赤裸々に描かれている。

 創業者グッチオ・グッチの孫で、会長にも就任した経営者マウリツィオ・グッチが銃弾に倒れた。マウリツィオ・グッチ殺しを依頼した犯人は、元夫人のパトリツィア・レッジアーニであった。彼女は、離婚後もグッチを自分のものにしようとする欲望の化身だった。これほどまでに醜悪で致命的な殺人事件があったのにもかかわらず、グッチそのものは何も変わらず、今でも全世界のラグジュアリー製品の最高峰に君臨している。

 また最近、韓国で高級ブランドと関連して、インターネット上で途方もない話題を振りまいた女性がいた。彼女の名前は「freeジア」(本名:ソン・ジア、24才)。登録者数191万人のユーチューバーかつインフルエンサーで、モデル、ビューティークリエーターなど様々な肩書きを持つ。

 彼女は、優れたメイクアップの実力と、髪の毛の先端からつま先に至るまで最高級のブランド品で着飾る派手なファッション・センスで有名になった。

 テレビの芸能番組にゲスト出演し、スターダムにのし上がると、漢江が見下ろせる高級マンションに住み、高級ブランド品のインテリアであふれた自宅を公開した。中国に進出するため、自分だけのオリジナル化粧品ブランドも開発していた。そして、MZ世代(1980年代半ばから1990年代初頭に生まれた「ミレニアル世代」と、1990年代後半から2010年の間に生まれた「Z世代」を合わせた言葉)の憧れとなった。

 20代という年齢ですべてのものを手に入れたように見えたfreeジアだが、あたかも魔法が解けたかの如く、彼女は一瞬にしてすべてのものを失った。最高級品と謳っていた衣装、アクセサリーなどがみな偽物だったのだ。ブランド品を見分ける、視聴者ユーザーによる鋭い鑑定によって暴かれたのだ。彼女は、自身のユーチューブに謝罪動画を上げ、高級ブランドを誇示した映像はすべて削除された。