第2回米朝首脳会談でベトナムを後にする金正恩氏。シャーマンも同行していたという(写真:ロイター/アフロ)

「シャーマニズム政治」は、シャーマンの助言で国家の主要な決定を下し、実行する政治である。北朝鮮は極秘裏にシャーマニズム政治を実践してきた。シャーマンを要職に座らせ、助言と占いで主要課題を決定してきたのだ。北朝鮮のシャーマニズム政治は金日成時代から金正日時代を経て、金正恩時代の今も続いている。北朝鮮のシャーマニズム政治はどのような姿なのか。

(過去分は以下をご覧ください)
◎「北朝鮮25時」(https://jbpress.ismedia.jp/search?fulltext=%E9%83%AD+%E6%96%87%E5%AE%8C%EF%BC%9A)

(郭 文完:大韓フィルム映画製作社代表)

 2004年4月22日午後0時10分頃、北朝鮮の平安北道龍川郡(ピョンアンプクト・ヨンチョングン)の龍川駅で大爆発が発生した。硝酸アンモニウムを積んだ貨物車両と軽油を積んだタンクローリーが交換作業中に衝突。電車の高圧電線が切れて油類輸送列車の上で炎が燃え上がり、大規模な爆発事故が起きたのだ。

 龍川駅周辺の多くの建物や民家が破壊され、150人余りが死亡、1300人余りが負傷した。爆発地点に15メートルの穴が空いたことからも大規模な爆発だったと推測できる。

 イスラエルの情報機関モサドの仕業という説、軽油を盗もうとした人が起こしたという説が出るなど、北朝鮮史上最大の爆発事故である。

 爆発事故の8時間前、金正日氏が乗った列車が龍川駅を通過した。中国訪問を終えて帰国する金正日氏の1号列車は、午前4時頃に龍川駅を通過し、朝6時頃、平壌駅に到着した。金正日氏に同行した護衛司令部の軍官は、金正日氏の特別書記だったシャーマンをあざ笑ったという。

「大明天地の明るい世の中で、金正日元帥の暗殺事件が起きようか。特別書記の取り越し苦労に疲れるばかりだ」

 だが、8時間後に龍川駅で大規模な爆発事件が起きたという知らせに護衛司令部はもちろん、金正日も驚いた。爆発事故は金正日氏が乗った1号列車が通過する予定だった時間に起きたのだ。なぜ金正日氏が乗った列車は8時間も繰り上げて龍川駅を通過したのだろうか。