硫酸塩泉にも似た板室温泉の名湯

 また、私の郷里にある有馬温泉(兵庫県)は、日本三大薬湯として知られる有名な温泉です。有馬温泉は、一つの敷地内に「金泉」(含鉄泉)と「銀泉」(二酸化炭素泉および放射能泉)という異なる泉質のお湯が出ている珍しい温泉です。「金泉」は鉄分が豊富に溶け込んでいて赤銅色をしており、「銀泉」は対照的に無色透明なのです。

 有馬温泉は、あの豊臣秀吉がたいへんお気に入りだったという名湯です。複数のすばらしい泉質による健康効果を、体感的に知っていたのでしょうね。

有馬温泉の源泉(写真:アフロ)

 出身地の温泉を取り上げましたので、私がいま住んでいる那須塩原市からも板室温泉(栃木県)をご紹介しましょう。板室温泉は、泉質としては単純泉に分類されるのですが、硫酸イオンやカルシウム、ナトリウムといった成分が豊富で、硫酸塩泉に似た特徴も兼ね備えています。こうしたすばらしい泉質から「下野の薬湯」と呼ばれ、古くから湯治の里として親しまれてきました。