オミクロンは肺炎を起こさないのか? 感染後に症状が出る割合は? 将来新たなパンデミックは起こるのか? 猛威をふるうオミクロンの実像と今後の展望を感染症の専門家、四柳宏東京大学医科学研究所教授に訊く。連載「実録・新型コロナウイルス集中治療の現場から」の第78回。
とうとう1日あたりの全国の新型コロナウイルス新規感染者が10万人を超えました。この急激な感染拡大を引き起こしているオミクロンはどのような変異体なのでしょうか。東京大学医科学研究所先端医療研究センター感染症分野教授の四柳宏先生に、今後の展望と合わせて伺いました。
讃井 さっそくですが、オミクロンの特徴をお教えください。
四柳 ひとことで言えば、今までの新型コロナウイルスとは大きく異なる性質を持つ変異体です。新型コロナウイルスの細胞への侵入方法のひとつは、細胞に発現するACE2という受容体(レセプター)にウイルス表面の突起(スパイク)の中のレセプター・バインディング・ドメイン(受容体結合ドメイン)という部位がくっつくことです。オミクロンでは、このレセプター・バインディング・ドメインに非常に多くの変異が入っています。
もうひとつの侵入方法は、ACE2を介さず、細胞とウイルス自体が直接融合するというもので、オミクロンはおもにこの方法で細胞に感染するとされています。これはデルタまでには見られなかった特性です。