2020年2月4日、ドナルド・トランプ大統領の一般教書演説を前に談笑する最高裁判事(左から4人目がニール・ゴーサッチ氏、一番左がジョン・ロバーツ氏、次がエレナ・ケイガン氏、一番右がブレット・カバノー氏)

切り札・ワクチン接種義務化実現せず

 就任1年目のバイデン米政権が新型コロナウイルス対応で二進も三進もいかない。

 その元凶が米連邦最高裁の判事の間の対立だとなれば、「建国の祖」たちも苦笑いしているに違いない。

 ジョージ・ワシントン初代大統領らが描いた「三権分立」の理想が見事に機能してコロナウイルス対策を阻んでいるからである。

 連邦最高裁は、1月13日、変異株「オミクロン株」の拡大が止まらない中、ジョー・バイデン大統領が「切り札」としていた民間企業へのワクチン接種義務化を差し止めてしまった。

 その理由は「行政府の権限を超える措置」だから、という判断だ。

 最高裁は保守派6人、リベラル派3人の「保守王国」。

 民主党は、ホワイトハウス、上下両院を取ったものの、肝心要の最高裁は、ドナルド・トランプ氏にかすめ取られてしまった。

 トランプ氏が在任中、空席となった3ポストに保守派3人を強引に押し込んだことがここにきて効いている。

 バイデン氏も今回のワクチン接種義務化をめぐる最高裁の出方は、当初から薄々分かっていた。

 そこで、バイデン氏は高機能マスク(防護力の強い「N95」を奨励)の無料配布、簡易検査キット5億超の追加調達などの対策を打ち出した。「Bプラン」だ。