「われわれは日本に過度に期待することはできない」

 1月21日には、中国最大の国際紙『環球時報』に、中国を代表する日本専門家の一人、劉江永(りう・えいこう)清華大学国際学部教授の寄稿文が掲載された。題して「日本政界『二重権力構造』はどんな影響を及ぼすか」。その要旨は、以下の通りだ。

<今年1月12日、岸田文雄は執政後初めて、安倍晋三と会食した。それはまさに、北朝鮮が最近、ミサイル発射実験を行っていることに対し、いかに制裁を強化するかということ。及び中国、ロシアとの関係について、安倍と討議し、教えを乞うためだった。かつて安倍内閣で長期にわたり外相を務めた岸田は、安倍を「背後の首相」と見立てているようだ。事実が示しているように、「安倍・麻生体制」は依然として岸田内閣に巨大な影響力を保持していて、現在の日本政界は「二重権力構造」の特徴が明確だ。

 第一に、「安麻体制」は依然として背後で、日本の政局と内外政策に対して重要な影響力を発揮している。第二に、安保外交戦略の方面で、岸田文雄は安倍内閣の外相であり、「2+2」会議の日米同盟強化の枠組みや、米日豪印のQUADの枠組みを通して、「自由で開かれたインド太平洋」を引き続き推進していく。おそらくこれらは、岸田内閣が今年中に改正する「国家安全保障戦略」に明記されるだろう。

 第三に、岸田と安倍は、今年7月の参院選に勝利するために徒党を組むことは、互いの共同利益に合致する。岸田にしてみれば、参院選に勝利すれば、長期政権に有利だ。安倍からすれば、自民党が参院選で3分の2以上の多数の議席を獲得すれば、岸田に改憲を促すことが可能になる。

 松野博一官房長官は、橋本聖子東京五輪・パラリンピック組織委員会会長、山下泰裕日本オリンピック委員会会長、森和之日本パラリンピック委員会会長を、北京冬季オリンピック・パラリンピックに出席させると発表した。政府代表団を派遣しないし、「特殊な術語」(外交的ボイコット)は使わない。だが安倍はあえて、「これは中国との人権闘争の中で、日本が志を同じくする国と共に立つということだ」と言った。

 昨年末、日本は臨時国会で、高市早苗が提出したいわゆる「中国の人権問題非難決議」を討議しなかった。だが今年1月17日に開会した通常国会で、高市は北京冬季オリンピック開幕前の2月1日に、この決議を通そうとしている。いままさに日本の与野党で具体的な文言などを調整中だ。

 このように日本政界には「二重権力構造」が存在し、林芳正外相は事実上、自民党内の対中強硬派によって訪中を「封殺」されている。おそらく5月までの実現は難しいだろう。このことは国交正常化50周年の中日関係から言えば、消極的な影響を形作るものだ。

 そのような日本に対して、われわれは過度に期待することはできない。実際に幻想を抱いてもいけないし、十把一からげにして掴むこともできないのだ>

 劉教授とは北京で会食したこともあるが、文化大革命で下放されていた若い時分、擦り切れた日本語の教科書だけが光明だったと述べていた。そんな知日派も、悲観論を語るようになってきているのだ。

 日本は中国の脅威に対抗するため、アメリカに頼る。するとそれを快く思わない中国は、ますます日本に圧力をかける。こうした悪循環によって、日中国交正常化50周年の年は、誰もニコニコしないまま進んでいく――。