首相官邸で「日豪円滑化協定」のオンライン署名式に臨む岸田文雄首相とオーストラリアのスコット・モリソン首相(2022年1月6日、写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

(北村 淳:軍事社会学者)

 中国を軍事的仮想敵筆頭に据えたアメリカは、極東方面に展開可能な自らの海洋戦力が弱体化してしまったため、中国に対抗するためには各軍種ごとの大幅な戦略転換とそれに伴う組織再編並びに装備調達が急務となっている。

 しかしながら、戦略転換はともかく新戦略の遂行に必要な装備、とりわけ艦艇や航空機や宇宙兵器、それに長射程ミサイルなどの開発や製造には時間がかかる。

 そこでアメリカは再び十二分な対中戦闘能力を手にするまでの期間、同盟国や友好国を掻き集めて対中牽制網を構築して時間稼ぎをしようとしている。

 そのためにアメリカは、かねてより存在しているアメリカ・イギリス・カナダ・オーストラリア・ニュージーランドによる英語圏軍事情報網である「ファイブアイズ(Five Eyes)」、日本の提唱がきっかけとなり誕生した日本・アメリカ・オーストラリア・インドによる「クアッド(Quad)」、それに昨年(2021年)に発足したアメリカ・オーストラリア・イギリスによる軍事同盟「AUKUS」などを対中軍事牽制の手駒として動員しようとしている。