米海軍のオハイオ級弾道ミサイル原潜(10月1日撮影、米海軍のサイトより)

「中国との本格的対立」の決意

 オーストラリアは「中国との本格的対立」を決意した。

 それは、フランスとの潜水艦共同開発計画を破棄し、国家存亡をかけて米英との新たな軍事同盟としての「AUKUS(オーカス)」創設を選択した方針転換に表れている。

 オーストラリアにとって、中国は最大の貿易相手国である。オーストラリア外務貿易省2020年統計によると同国の輸出は、

①中国36.4%
②日本10.7%
③米国6.3%

 輸入は、

①中国23.9%
②米国12.6%
③日本5.5%

 の順となっている。特に、中国は毎年、資源大国オーストラリアの原材料(鉄鉱石、石炭、液化天然ガスなど)輸出の3分の1以上を買い上げる最大のお得意様である。

 そのオーストラリアが、経済を大幅に依存する「中国との本格的対立」を決意しなければならなくなった理由は、中国の経済制裁による損失や様々な報復措置を考慮に入れてもなお、優先的に守らなければならない国益があるからだ。

 その国益とは、中国による進行中の「浸透・影響工作」、いわゆる「間接侵略」から自国を守ることであり、また、身近に迫る軍事的脅威を未然に防止(抑止)することにほかならない。

 まさに国家存亡をかけた重大な決断である。

「浸透・影響工作」の詳細は、 クライブ・ハミルトン著『目に見えぬ侵略 中国のオーストラリア支配計画 』(飛鳥新社、2020年)に詳しい。

 ここでは、以下のような様々な工作によって、オーストラリアが知らないうちに中国共産党に浸食されている衝撃的な事実が明らかにされている。