横須賀沖の米ミサイル駆逐艦「ラルフ・ジョンソン」に着艦するヘリコプター(1月12日、米海軍のサイトより)

 在日米軍基地で新型コロナウイルス感染者の急増が報じられてからも、米国を出発する軍人の検査が行われなかったばかりか、日本入国時やその後においてもほとんど対策が講じられなかった。

 ようやく在日米軍が対策を取り始めたのは、岸田文雄首相の強い懸念発言と、それを実行面で確認する日米の外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2+2)が開かれた後である。

 しかし、ここでも、法令に基づくものではなく、あくまでも共同発表による「要請」で、その場限りの効力しかないことに注目する必要がある。

在日米軍兵士の行動

 日本では「要請」でも、世間体を気にし、また市民による自察団のような監視が自然発生的に出現するなどして効果を上げる。

 現にコロナ禍のこの約2年間、感染者が増大するたびに緊急事態条項の欠落が指摘され問題となるが、さりとて強制性を持つ法制化には一向に進まなかった。

 他方で、欧米や中国などではロックダウン(都市閉鎖)がいとも簡単に実施され、違反者には莫大な罰金なども科される。

 すなわち、最高指導者が法令に基づいて国民を強制的に従わせるが、日本では医療崩壊の危機が騒がれても首相は国民に行動の自粛を「要請」する以上のことはできない。

 国民に対してこのような状況であるから、ましてや在日米軍に対して強く出ることなどは考えられない。

 在日米軍の行動に関しては日米安保条約に基づく「地位協定」がある。

 しかし、米軍が多くの国と結んでいる同様の協定の中で、日本の主権喪失が最も大きいとされる(伊勢崎賢治・布施祐仁著『主権なき平和国家』)。