安倍と二階が結託か 首相経験者たちのハッスル

 面白いのは、≪敵の敵は味方≫の法則通り、菅と安倍が再び接近する気配がある点だ。「安倍―菅」の関係は悪くはない。安倍は12月3日、菅との関係について「絆は相当強い。いろんな場面で協力できることも多いのではないか」と語っている。「反岸田」で「安倍―菅」ラインが復活すれば、政局の見取り図は大きく変わる。

 ただし、「安倍―菅」ラインが「反岸田」になるかどうかは、二階の動向次第だ。二階は現在、鳴りをひそめているが、それは仮の姿である。安倍と二階は水面下で連携を模索しているようだ。「安倍―菅―二階」が組めば、「岸田―麻生」の大宏池会は吹き飛ぶ。二階側近は周囲に「大石内蔵助は昼行灯で敵を油断させた」と意味深なことを言っている。だんまりを決め込む二階が不気味だ。

二階俊博前幹事長(写真:Motoo Naka/アフロ)

 2022年の通常国会は1月17日に召集される見通しで、会期延長がなければ会期末は6月15日。参院選の投票日は7月10日となる公算が大きい。このままいけば2022年も自民党は安泰だろう。岸田首相の「聞く力」は、選挙対策として考えた場合、相当便利な武器である。軌道修正を図れば図るほど「聞く力」があると褒められるからだ。10万円の給付金についても、方針はぶれたものの、全額現金も可、としただけで世論と自治体から歓迎された。

 日本政治は岸田長期政権に向けて動いている。来年の参院選を乗り越えれば、当面は国政選挙がない。解散をしなければ、2025年11月まで政権を維持できる算段が立つ。2012年12月の衆院選で勝利し、翌年の参院選で勝利した第2次安倍政権が安定軌道に乗ったのは記憶に新しい。

 そんな状況で、3人の首相経験者がうごめいている。2022年は首相と元首相の4人の組み合わせ、相性が最大のカギとなる。パターンは「岸田―麻生」(良好)、「岸田―安倍」(離反)、「岸田―菅」(根本的に対立)、「安倍―麻生」(やや微妙)、「菅―麻生」(もともと悪い)、「安倍―菅」(再び接近)の6通りで、これに二階、茂木という新旧の幹事長が加われば、15通りとなる。

 首相経験者が表舞台でこれほどまでにハッスルしているのは、1970年代後半から80年代前半の「三角大福中」(首相就任順は、田中角栄、三木武夫、福田赳夫、大平正芳、中曽根康弘)時代以来かもしれない。今年の政局は首相経験者たちの暗闘がメーンになりそうだ。