世界遺産登録の際に韓国の抗議活動が繰り広げられた軍艦島(写真:Science Photo Library/アフロ)

(羽田 真代:在韓ビジネスライター)

 12月21日、韓国・ヘラルド経済から「“世界遺産”登録挑戦 日 佐渡鉱山で朝鮮人強制労働者1140人の賃金未払い」という記事が公開された。

 日本の市民団体である「強制動員真相究明ネットワーク」の小林久公事務局次長が過去に入手した資料を再度確認したところ、「佐渡鉱山で強制労働させられた朝鮮出身労働者が1000人を超えていた」「1949年2月24日に1140人に対する未支給賃金として23万1059円59銭が供託された」「日本当局は供託金の時効を以て、1959年5月11日に供託金を国庫に編入した」ことが公文書に記録されていたという。これら文章は、新潟労働基準局が1950年10月31日に、労働省労働基準局長に報告するために作成されたもので、今は日本・国立公文書館に保管されている。

 この公文書の内容が正しければ、新潟労働基準局が書類を作成した1950年から供託金の時効を迎えるまで、1140人もの朝鮮出身労働者は給与の受給を申請しなかったことが読み取れる。韓国メディアは、この件を報道することによって過度に世間を騒がせようとしているが、日本側は法律に則って処理していることから何の落ち度もない。

 そもそも、1965年に締結された「財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定(いわゆる日韓請求権協定)」で未払い賃金については既に解決済みである。

 現代の100円が1950年頃は13円程度だったというから、ざっくり計算して180万円弱といったところだろうか。日韓請求権協定で日本は韓国に対し無償3億ドル、有償2億ドルの膨大な経済協力資金を支払っているのだから、未払い賃金を支払えと当時の労働者が名乗りを上げたところで、韓国政府がこの中から補償するまでだ。わざわざニュースとして取り上げるほど価値のある発見ではないだろう。

 むしろ「朝鮮出身労働者にも賃金が支払われていた」という証明であり、無給の強制労働ではなかったとの裏付けになっただけではないか。

 韓国側がこのような報道を行った背景に、佐渡鉱山を2022年2月世界文化遺産候補として推薦する日本の動きが関連している。