韓国の文在寅大統領(写真:AP/アフロ)

 韓国では11月1日から始まった「ウィズコロナ(ソーシャルディスタンスの段階的廃止)」以降、コロナの感染状況が悪化の一途をたどっている。1日の新規感染者が5000人台になる事態が定着しており、この感染者数の爆発的増加によって、ソウルをはじめ首都圏の病床稼動率は90%に迫り、1日の死亡者数もすでに100人を超える有様だ。医療界では医療システムの崩壊を警告する声が相次いでいる。弱り目に祟り目で従来のウイルスより感染力が強いと懸念される「オミクロン株」まで韓国に本格上陸した。

 最初に確認されたオミクロン株の感染者は、11月24日にナイジェリアから入国した40代夫妻だった。その後、12月6日現在で、韓国ではオミクロン株に感染された累積感染者が22人にのぼっている。

ナイジェリア帰りの牧師夫妻を乗せた運転手が「スーパー拡散者」に

 オミクロン株感染者が急増したのには理由がある。

 最初の感染者となったA氏夫妻は、仁川(インチョン)に位置する信徒2万人の大型教会の牧師で、ナイジェリアで開かれていた学術会議に出席して帰国すると、空港に出迎えに来た信者のB氏の車で自宅に戻った。だが帰国翌日、A氏夫妻のオミクロン株感染が確認されてしまう。それなのに「B氏に迷惑をかけたくない」と思った夫妻は、「空港から防疫タクシーを利用して自宅に戻ってきた」と、防疫当局に虚偽の報告をしてしまった。

 その結果、本来であれば濃厚接触者として直ちに検査を受けて隔離措置を受けなければならなかったB氏は、自分のオミクロン感染が確定するまでの5日間、教会など地域社会を歩き回り、同じ教会の信者や家族などにオミクロン株を感染させた「スーパー感染者」になってしまったのだ。