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韓国民が所持している、2種類の「身分証」(住民登録証)。これと携帯電話がなければ韓国では暮らしづらい(韓国行政安全部HPより)

(文:平井久志)

 年を取ると病院へ行くことが多くなります。筆者は糖尿病、高血圧、ぜん息という病気持ちです。久しぶりに韓国に来ましたが、こちらでも病院通いということになります。

 韓国では、外国人は入国から6カ月経たないと国民健康保険に入れません。保険料は払うので、もっと早く入れて欲しいと言ってみたのですが、駄目だと言われました。

 何でも、中国人や米国の市民権を取った在米同胞が、韓国に一時入国して費用の掛かる手術などを受け、その後、すぐ帰国するケースが増え、健康保険会計に大きな負担となったとか。だから、6カ月以上経たないと駄目だというのです。

ワクチン接種データも出入国管理もアクセス可能

 それで6カ月待ったのですが連絡がないので、近くの健康保険事務所に行ってみました。すると係員は、
「もう登録されているので、心配せずに病院へ行けば良い」
と答えるのです。僕は、
「健康保険証がないと行けないじゃないか」
と言ったのですが、係員は、
「保険証はそのうち届く。既に登録されているので保険証がなくても大丈夫」
と言うのです。

 正直、信じられなかったのですが、実際に近くの医院に行くと、保険証を提示しなくても「登録されている」と言われ、保険証は必要ありませんでした。

 韓国の医院で不思議なのは、「診察券」がないことです。日本の病院のように、1カ月1回は保険証を確認するようなこともありません。昔は延世大学附属のセブランス病院へよく通っていましたが、当時は病院の診察券が必要でした。今は、病院がランク付けされていて、紹介状がないと大病院の診察を受けることは難しいし、医療費の自己負担比率も大病院はかなり高くなります。特に緊急を要する事態でもないので、自宅近くのいくつかの医院に通っています。

 ソウルに来てからの耳鳴りの治療のため2週間に1度通っている近くの耳鼻科があり、そこでインフルエンザ予防接種の予約をしました。そしていざ注射をしようとすると、看護師が、
「肺炎のワクチンもやってないでしょう?」
と言うのです。

「そんなことまで分かるのか」
と驚きましたが、看護師は、
「両方とも無料だから、今日、一緒に打てば?」
と勧めます。

「無料なの。じゃあ頼みます」
と、左右両腕にインフルエンザと肺炎ワクチンの注射を打ってもらいました。

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