おもしろいのは、11月4日にIEA(国際エネルギー機関)が出した予測では「COP26の約束をすべて実行すれば1.8℃上昇に抑えられる」としていることだ。

図1 2000~2050年の世界のCO2排出量(IEA)

 図1でもわかるように、世界のCO2排出量は2019年にピークアウトした。2020年は新型コロナの影響で排出量が減ったが、その後も2019年以前の水準には戻らない。2050年ゼロは、本当に必要なのだろうか?

地球の気温上昇は減速している

 IEAのシナリオはCOP26の約束がすべて実現された場合の予測だが、何もしないとどうなるだろうか。

 これについてはIPCC(気候変動政府間パネル)が多くのモデルを紹介しているが、その予測を衛星からの実測と比較したデータを見ると、図2のように実測データは予測のほぼ最小値である。特に2010年代になってから、予測との差が拡大している。

図2 IPCCの気温上昇モデルの予測と衛星データ
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 この1つの原因は、石炭の消費量が2015年でピークアウトしたことだ。この時期にシェールガスの採掘が増えて石炭が代替され、再生可能エネルギーも増えた。

 皮肉なことに、パリ協定で「石炭は悪だ」と決めたころから石炭の消費量が減り、地球温暖化の危機は遠のいたのだ。このデータは、今までのボランティアベースの温暖化対策で、それほど急激な気温上昇は起こらないことを示唆している。

 これは温暖化対策をやめろという意味ではない。CO2は大気中に蓄積するので、排出量を減らしても数十年はCO2濃度は下がらない。しかし世界中で気候変動の危機が叫ばれているので、COP26で決まった程度のゆるやかな対策でも効果がある。石炭火力やガソリン車を禁止するなどの強い規制は必要ないだろう。