英グラスゴーで開かれているCOP26。右から2人目がアロク・シャーマ議長(2021年11月11日、写真:AP/アフロ)

(池田 信夫:経済学者、アゴラ研究所代表取締役所長)

 英グラスゴーで10月31日から開かれているCOP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)は、2050年カーボンニュートラル(CO2排出の実質ゼロ)を世界各国が約束する画期的な会議になるはずだったが、ほとんど何も決まらないまま終了する。

 COP26では石炭火力を2040年代までに廃止するという共同声明に46カ国が署名し、2040年までに新車販売をすべてゼロエミッション車にするという共同声明に20カ国が署名したが、どちらも法的拘束力はなく、日本は参加しなかった。これは正解である。脱炭素バブルは、この会議で終わるからだ。

1.5℃目標には科学的根拠がない

 今回の会議は、最初から失敗が約束されていた。これに先立って10月末に開かれたG20(20カ国首脳会合)では、中国とインドとロシアは「2050年ゼロには同意しない」と表明した。

 米バイデン政権は気候変動対策法案が議会を通る見通しが立たず、「2015年のパリ協定の1.5~2℃という目標を想起する」という奇妙な米中共同宣言を出したが、これは時計の針を6年戻すものだ。また4カ国(米・中・ロシア・インド)で世界のCO2排出量の半分を超えるので、それらの国が参加しない共同声明も条約も無意味である。

 パリ協定は地球の平均気温上昇を工業化前から2℃以内に抑えることを目標とし、1.5℃は努力目標としていた。環境団体などから反発が出たため、1.5℃上昇で気温上昇を止めるために2050年ゼロという目標が決まったが、2℃ではだめだという科学的根拠はない。