2021年4月に上場を果たしたビジョナル。上場初日の時価総額は約2500億円と、近年で最も注目される上場となった。企業と求職者が直接やりとりできるダイレクトリクルーティングという新しい文化を転職市場に持ち込んだビズリーチの誕生から創業者、南壮一郎の独特の経営方法まで、『突き抜けるまで問い続けろ―巨大スタートアップ「ビジョナル」挫折と奮闘、成長の軌跡』を上梓したノンフィクションライターの蛯谷敏さんに話を聞いた。(聞き手:長野光、シード・プランニング研究員)
※記事の最後に蛯谷敏さんの動画インタビューが掲載されています。是非ご覧ください。
──本書は転職プラットフォーム「ビズリーチ」と、ビズリーチを含むホールディングカンパニー、ビジョナルの誕生と成長の歴史を、創業者で代表取締役社長の南壮一郎氏の人生と経営哲学を中心に書かれています。冒頭で、ビズリーチはダイレクトリクルーティングという新しい採用方法を日本の転職市場に確立したと記されています。ダイレクトリクルーティングとは何でしょうか。
蛯谷敏氏(以下、蛯谷):ダイレクトリクルーティングとは、人材が欲しい企業が求職者に直接スカウトをかけて採用できるサービスのことです。
それまでの人材採用は、仕事を探している人と人材を募集している会社の間に人材仲介会社が入っていました。ビズリーチは、その人材仲介会社が担っていた部分に、新しいインターネットのプラットフォームをつくったんです。
──人材紹介会社に丸投げするのではなく、企業が人材プラットフォームの中で自分の目で欲しい人材を探すことには、どのようなメリットや効果があるのでしょうか。
蛯谷:その企業が採りたいのがどのような人材なのか、人材紹介会社が完全に理解しているわけではありません。
企業側の採用者が求職者に実際に会って話してみると、人となりを肌感覚で掴めるので人材のミスマッチを防ぐことができる。それが、ダイレクトリクルーティングの大きなメリットです。特に優秀な人材に対しては、企業側が自分たちの会社の魅力を直接伝えられるという利点もあります。
──ビズリーチの創業者である南壮一郎さんは、もともと転職サービスに関わって来られたのでしょうか。