中国の台湾侵攻を想定した台湾軍の大規模軍事演習「漢光演習」(2021年9月14日、写真:ZUMA Press/アフロ)

(北村 淳:軍事社会学者)

 アメリカ政府は台湾防衛のために、たとえ核戦争へ突入する危険を覚悟してでも中国と戦う決意を明らかにする必要がある──このような米海兵隊退役将校の意見が米軍の準機関紙「星条旗新聞(Stars and Stripes)」(*)に掲載された。

(*)星条旗新聞は南北戦争中の1861年に発刊された。国防総省の予算で運営されているものの編集権限は軍・政府から独立している。

 筆者とこの退役将校は長年にわたる友人であるため、彼の真意が、台湾や東シナ海、それに南シナ海における中国の軍事的支配が完全に確立されてしまうのを阻止するために、可及的速やかに対中戦争へ踏み切るべきだ、と主張しているわけではないことは承知している。

 その退役将校は、長年にわたって東アジアの軍事情勢を綿密に分析してきた。その分析を基に、「アメリカ政府がかねてより伝統的に立脚してきた『台湾に関する曖昧政策』こそが、台湾海峡問題、そして東シナ海を含む台湾周辺の軍事環境を不安定にさせる要因である」「バイデン政権はトランプ政権後期のように台湾支持の立場を明確にせよ」との主張を上記のように強い表現で行ったものであろう。