以上である。で、結局4店の評価はどうだったのか。細かいことをいえば、スシローの中とろは見栄えも味もいい、いかは「かっぱ」が一番うまいとか、「はま」は真あじがよく、「くら」は真鯛が捨てがたい、などのことがあるが、「ふつうにうまい」というレベルでいえば、各店に大差はないのである。微差をうんぬんしても意味はない。

 どの店に入っても大丈夫です。決定戦と息巻くこともなかったのである。しいていえば、やはり1貫から注文できる「かっぱ寿司」が、カスタマーフレンドリーちゅうんですか、ひとり客にはありがたくて一番かな、という気がするのである。

テレビと店で品物は同じか?

 TBSの番組「ジョブチュ-ン」を見るたびに腹が立つ。一流店(?)の料理人たちが人気チェーン店の料理に○×をつけるやつである。チェーン店の幹部たちが、高級店の料理人たちの評価に一喜一憂する姿が情けないのである。かれらは高級職人のために料理を作っているのではない。一般大衆のために作っているのである。客からの評価が一番であり、もっと自分たちの料理に自信をもてばいいのだ。

 9月25日は「海鮮三崎港」をやっていた。翌日、そんなつもりはなかったのだが、自転車に乗っていたら偶然海鮮三崎港の前を通りかかったので、チャンスとばかり初めて入った。なにしろ「ひとり回転寿司決定戦」開催中である。すると、やはり商売人だね、昨日の今日なのに「ジョブチューン、9勝1敗 史上最高の満場一致6品達成、9勝1敗メニュー税込み1525円」の貼り紙が写真入りで、各カウンターやテーブルに貼ってあったのである。

 わたしは貝が嫌いなので、その「9勝1敗メニュー」は頼まず、レーンにも寿司は流れていたが、パネルから個々に注文した。満場一致ネタだった「とろたく」と「〆さば」は頼んだ。するとレーン内にいた女性がすぐ持ってきたのである。レーンに流れている品を探して持ってきたのだろう。これはよくない。作って時間が経っているせいか、「とろたく」を巻いている海苔が湿気っていてなかなか噛み切れないのだ。湿気った海苔は、根性あるよ。力を入れすぎて食いちぎり気味になったため、横からまぐろがはみ出てくる始末で、往生したわ。審査員全員絶賛だった「〆さば」もきわめてふつうであった。

 それで疑問を持ったのだが、テレビで食べている品物と店で出している品物はまったく同じものかということである。同じだと思いたいが、その保証はない。少なくともテレビで出している海苔はパリッパリであろう。で、店でわたしが食べたのは8皿で1625円だった。海鮮三崎港は「スシロー」「くら」「はま」「かっぱ」に比べて割高である。そうしてみると、海鮮三崎港の味が突出してうまいわけではない。ふつうである。

そのほかのチェーンは

 海鮮三崎港と似たような名前の店に「すし銚子丸」がある。なぜかランチは「劇団セット」という名前で「7貫 1267円」である。週替わりなのか「8貫」のときもある。わたしが食べたときは、大とろと蒲焼のうなぎがうまかった。しかしネタの切り方が雑。鉈でぶった切ったようだった。

「がってん寿司」という店がある。わたしは入ったことはないが、ここでは職人が実際ににぎるようである。全体的にすこし高めらしい。しかもネタがでかいという。この店のファンは自慢気に、「がってん」は他の回転寿司とはちがうよという。店の前には「日替わりランチ 10貫 1402円」のポスターが貼ってあるが、どうも入りにくい。注文したら「がってん!」とかいわれるんじゃないか、と怖いのである。

 金沢発祥でうまいと評判の「金沢まいもん寿司」というのがある。関東にも数店あるようだが、京都駅前地下街の「ポルタ」にもある。ここもデカネタが売りのようで、入ったことがない。ネタがシャリの上に大きな布団のように覆いかぶさっているのである。客は一口で食べられずに、口から魚の切り身がはみ出ているのである。しかし店側はそれが自慢のようである。客もそれが得した気分になれるからか、うれしいらしい。

 ほかには、立ち食い寿司の「ちよだ鮨」がある。ランチは3種類あるが、12貫979円というのがいい。初めて入ったときは、人差し指くらいの細い寿司が出てきてびっくりしたが、これがけっこう上品な寿司だった。しかしなにしろ小さいものだから、あと3品とかんぴょう巻きを追加した。

 回転寿司も街中の大衆寿司店もたぶんおなじだと思うのだが、寿司を食べたあと、いちおう腹いっぱいにはなるのだが、満足感や充実感が少ない。結局、腹いっぱいになったのはシャリ(ごはん)を大量に食べたからであり、味は醤油味だけだから、満足感も充実感も少ないのだろう。おまかせ20貫で4万円も5万円もする高級寿司店には行ったことがないが、そっちの店の満足感はさすがにまたべつか。それとも基本おなじか。そもそも寿司で腹いっぱいにしようというのが間違いかもしれない。