中国企業が建設を進めるエジプトの新首都。アフリカの建設工事は中国が席巻している(写真:ロイター/アフロ)

 最後に残された巨大市場と言われるアフリカ。飢餓や貧困、あるいは内戦のイメージが強いが、近年は各国、特に中国が積極的に開発や投資を進め、加速度的に経済発展を遂げている。

 ルワンダは「アフリカのシンガポール」を目指して、先進国の先端テクノロジーの試験場となる道を進み、ワクチンや血液を運ぶAIドローンが空を飛ぶ。ケニアではキャッシュレス決済サービスが社会インフラとなり、GDPの半分を超える取引額を達成した。ケニアではベンチャー企業が救急車の配車プラットフォームを構築し、年間3000件以上の救急対応をしている。

 アフリカで今、何が起こっているのか。『超加速経済アフリカ:LEAPFROGで変わる未来のビジネス地図』(東洋経済新報社)を上梓したAsia Africa Investment & Consulting(AAIC)の椿進・代表パートナーに話を聞いた。(聞き手:山内 仁美、シード・プランニング研究員)

※記事の最後に椿進氏の動画インタビューがありますので是非ご覧ください。

──本書の中で、先進国のベンチャー界で起きている一つのモデルとして、先進国で研究開発し、商用サービスは最初にアフリカで行う方が先進サービスを迅速に展開できるというメリットが書かれています。将来、先進国の先端テクノロジーの試験場は発展途上国となり、人口の多いアフリカはその中で有望な候補になっていくということでしょうか。

椿進氏(以下、椿):例えば、遠隔診断AI診断サービスを提供する英国のベンチャー企業、babylon/babelのサービスは240万人が利用しています(2019年時点)。この会社が商用サービスを本格的にスタートさせたのは、本拠地の英国ではなくルワンダでした。

 ドローンや自動運転は、その頭脳となるAIが多くのデータを読み込まないと賢くならないので、実際に商用しないと進化しません。日本で新しい技術を生かそうとしても規制が山ほどあり、既得権益者がそれにしがみついている。それだったらアフリカでやった方が早いし、いろいろな可能性を試すことができます。

──米国ではAmazonがドローンを使った配送を10年以上前から発表していますが、法規制の面から実現することができずにいます。これに対して、米サンフランシスコの企業がルワンダとガーナで「Zipline(ジップライン)」という商用物流サービスを展開し、血液や医薬品をドローンでデリバリーしていると本書にあります。ドローン配送がアフリカで商用化される可能性はあるのでしょうか。

椿:もう始まっています。Amazonのドローンの最大の問題はコストです。例えば1000円のピザに対して、往復2万円の配送料がかかるのに注文する人がいるでしょうか。ドローンはパイプラインを上空から確認するとか、映像を撮影するには適していますが、物流や配送で使うにはコストに見合いません。

 世界のドローン会社のうち、最も多くの飛行実績があるのがZiplineです。Ziplineはドローン専用空港をルワンダで2カ所、ガーナで4カ所持っています。ガーナではワクチンもデリバリーしています。

 1日3回、ドローン空港からワクチンを積んだドローンを飛ばすと、地方のヘルスセンターまで自動で飛んでいきます。目的地に着くと、パラシュートでワクチンを落下させて自律運転で帰ってきます。

 1回のペイロード(積載量)が1.7kg程なので、1回の飛行でワクチン2000本を積むことができます。ワクチンには温度管理が必要ですが、地方のヘルスセンターにはその設備がないからストックしておけない。だから、その日に使う分のワクチンをドローンで素早く届けられるというのは合理的なんですね。1配送2000円なので、ワクチン2000本ならコストに見合います。