自民党の新総裁に岸田文雄が選出された。今後の組閣人事で政権としての方向性が見えると思われるが、中国や台湾を巡る問題、また韓国との関係改善にどう取り組むのか、周辺国の注目が集まっている。韓国では新総裁の誕生をどう見ているのだろうか。
(立花 志音:在韓ライター)
第27代自民党総裁に岸田文雄氏が就任したというニュースは韓国でもすぐに報道された。岸田新総裁は、韓国では慰安婦合意を主導した人物として知られている。韓国では、冷え込んだ日韓関係に変化があるか、改善するかといった論議を始める人もいるが、首相が変わったからと言って日韓関係が変わることはないだろう。
総裁選期間の政策討論会で、候補者の一人であった高市早苗氏が慰安婦問題について、「(韓国は)岸田さんと約束してきたことを守っていただきたい」と発言した場面があった。
高市氏が話した約束というのが2015年12月28日の慰安婦問題における日韓合意を指している。この合意は両国間で2014年の4月から交渉が始まり日本政府が韓国政府に10億円を拠出し、「日韓間の慰安婦問題が最終的かつ不可逆的な解決されることを確認する」と日韓外相会談後に世界に向けて共同記者発表された。
その当時の外務大臣が岸田文雄新総裁である。
ところが、この日韓合意を文在寅政権は法的拘束力がないと主張し、約束だった日本大使館前の慰安婦像の撤去はおろか、合意後に韓国内外の慰安婦像は増加した。
日本政府は合意に基づき、韓国政府が設立した元慰安婦を支援する「和解、癒し財団」に10億円を拠出した。その10億円から、生存中の元慰安婦に約1000万円、遺族には約200万円が支払われたが、韓国政府は日韓合意の再交渉を求める韓国の世論を背景に、財団を解散させてしまった。韓国内では、募金で集めて10億円を日本に返却し、合意を撤回しようと活動する団体もあったが、お金が返還された事実はなかった。
それだけではなく、岸田新総裁は2015年の外務大臣時代に、韓国にかなりの煮え湯を飲まされている。