ドイツで9月26日、任期満了に伴う総選挙が実施された。4期16年を率いたメルケル首相の引退もあって注目された今回の総選挙であるが、同首相を擁する中道右派のキリスト教民主同盟(CDU)と同じく中道右派の社会同盟(CSU)からなる「保守連合(CDU/CSU)」の支持率が、事前の世論調査で一時20%を下回る異例の事態となった(図1)。
●図1 主要政党の支持率と総選挙での得票率
また、今年春に支持率でCDU/CSUを上回り、今回の総選挙で「台風の目」になると目された環境政党「同盟90/緑の党(B90/Gr)」の支持率も失速、代わって台頭してきたのが中道左派の社会民主党(SPD)であった。選挙戦終盤にかけてSPDの支持率は20%台半ばまで上昇、オーラフ・ショルツ副首相の人気もあって首位に上り詰めた。
暫定集計段階では、SPDが前回の153議席から53議席を積み増し、206議席を獲得して16年ぶりに第一党の座を確保した(図2)。一方でCDU/CSUが前回246議席から50議席を失う歴史的な敗北を喫し、第二党に沈んだ。そしてB90/Grは前回の67議席から51議席を積み増して118議席を得たものの、第三党にとどまった。
その他、自由主義政党である自由民主党(FDP)は12議席を積み増し、極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」から第四党の座を奪取した。AfDは11議席を失ったが、それ以上に不調であったのは30議席を失った極左政党の「左派党(Linke)」であった。立場の違うAfDとLinkeだが、両党の過激な主張が有権者に嫌われた模様だ。
●図2 総選挙での獲得議席数の変遷(2017年と2021年)