千人近い「喜び組」と好色の限りを尽くした金正日

 韓国の主要な北朝鮮専門メディアであるデイリーNKもこのニュースを以下のように報じている。

 消息筋は「先月27日、各道の党6課に婚家6課、寡婦6課の対象者を選抜するように中央党の指示が出され、現在6課の指導員らが足を棒にして、基準に合う女性や未亡人の情報を集め、面接を行っている」と伝えた。

「6課とは何か」と思われるかもしれない。朝鮮労働党には、中央党に始まり、各都市や軍党委員会のレベルに至るまで6課という部署がある。この部署は、独自の全国組織網を通じて、「美しくスタイルが良く、品性の良い娘や未亡人を選抜し、平壌に送る業務」を担当している。

 最近、中央党6課が平壌や地方の各党委員会の6課に指示を通達し、平壌と地方別に割り当てを行うとともに、短期間のうちに600人の若い女性や未亡人を平壌に連れてくることになった。

 北朝鮮らしい話ではある。先代の金正日総書記がそうであったように、金正恩総書記も女性への執着が並外れているようだ。

 かつて存在した北朝鮮中央党5課、つまり「喜び組」については、既によく知られているとおりだ。「喜び組」出身の女性らが韓国に脱北したことで、主席宮殿内で行われている酒池肉林の宴会の内情が明らかになった。974軍部隊と呼ばれる金正恩総書記の身辺警護をする男性5課の構成員も数人が韓国へ脱北し、「喜び組」の実態を赤裸々に証言している。

 このように金正日時代に名をはせた「喜び組」だが、金正恩時代に代わってからは、その名を耳にすることがなくなった。若くて美しい妻に満足してしまったからだろうか。それとも、最初の寵愛の対象だった玄松月氏(国務委員会芸術団団長)をはべらせておく中で、別途「喜び組」を置く必要を感じなかったからだろうか。金正恩総書記は党5課自体を廃止してしまった。

金正恩総書記の寵愛を受ける玄松月氏(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 しかし血は争えなかった。

 かつて金正恩総書記の祖父、金日成主席は齢80歳にして20代の「喜び組」との間に息子をもうけた。父・金正日総書記は少なくとも6人の正室がいただけでなく、千人近い「喜び組」を全国35の別荘に住まわせ、好色の限りを尽くしたという伝説の人物だ。

 それだけに、その血を引く金正恩が女性に淡白で、李雪主夫人に一途な男であることを期待するほうが難しい。これまでは、単に自分の首を狙う者たちの影が恐ろしく、権力の足場固めを優先していたのだろう。