「喜び組」復活のために金正恩が働かせた悪知恵

 実際、金正恩総書記はこれまでに、叔父や兄を筆頭に、親族を含む数千人を機関銃や火炎放射器で惨殺した。その結果、誰もが彼に恐怖心を抱き、権力の土台が安定した。こうして条件が整ったので、いよいよ持ち前の女性への執着が隠さなくなったのだろう。

 もちろん、金正恩総書記が新たに選抜した美女のすべてを「喜び組」にして女遊びをするつもりではないだろう。ひとまず自身の別荘や迎賓館で働く女性たちを交代させるという意図があるのではないか。

 後継者となった金正恩総書記が党5課を廃止した後、10年間にわたって新たに女性を採用しなかったため、全国各地の別荘で働く女性たちは、今や金正恩総書記より年上である。結婚適齢期も過ぎつつある。だから今回、「喜び組」の入れ替えを思いついたのだろう。

 しかし何とも、世界の潮流とはかけ離れた話である。今の世界はダイバーシティの観点から人権、とりわけ女性の人権尊重を重視している。北朝鮮も国連人権理事会に加入しているため、女性を含む国内の人権状況について、2年ごとに国連に報告書を提出する必要がある。

 一方、北朝鮮の住民も、金正日総書記の「喜び組」が、女性の人権を無視した破廉恥な存在であったことをよく知っている。国内ですらそうなのだから、世界の目が北朝鮮の人権状況に非常に厳しい目を向けていることは天下の常識だ。

 そのことを意識せざるを得ない金正恩総書記は、「喜び組」の復活を秘密裏に進めようと悪知恵を働かせている。かつて全国で美貌の女性を探し出す任務を負っていた党5課は廃止したまま復活させない。その代わりに、党6課に任務を引き継がせるという悪知恵である。

 本来、党6課は抗日闘士の子孫、英雄と認められた者の家族、韓国に送り込んだスパイの家族などの福利を担当する部署だった。だが、今や党6課は本来の任務より、金正恩総書記の要求する女性を探し出す特別任務に注力させられている。