(作家・ジャーナリスト:青沼 陽一郎)
サステナビリティ(sustainability)とは“持続可能性”のことだが、その必要性と重要性を説いたのはそもそも菅義偉首相である。それがわずか1年で政権を維持できなくなったとなると、菅首相こそサステナビリティに欠けていたことになる。
「我が国は、2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことを、ここに宣言いたします」
ちょうど1年前に発足した菅内閣。初めての所信表明演説で菅首相はそう断言して、政策の柱にグリーン社会の実現を掲げた。地球温暖化対策は持続可能な社会を実現するためには喫緊の課題であって、日本も世界に遅ればせながら具体的な数値目標を設定したことは、歴史的なことであり、むしろ政権の評価に値する。
そこからサステナビリティという言葉は頻繁に耳にするようになった。「国民のために働く内閣」を標榜した菅政権の具体的政策の中にもある。官邸HPがまとめる「菅内閣政策集」によれば、「グリーン社会の実現」のための「サステナブルファイナンスの推進」を謳って、金融庁が「サステナブルファイナンス有識者会議」を設置しているほどだ。
「ESG」や「SDGs」の浸透は菅政権の功績
地球規模の気候変動が現実のものとなり、加えて貧困や教育、経済格差などの社会的課題がグローバルに広がってくれば、官民を挙げての社会問題の解決策や支援が必要となる。いかにして民間の資金を社会的課題の解決に流せるか、そこに新しい経済成長戦略が期待できる。具体的に菅政権は今年1月の施政方針演説の中で、民間企業に眠る240兆円の現預金、3000兆円とも言われる海外の環境投資を呼び込むための金融市場の枠組みをつくり、「グリーン成長戦略を実現することで、2050年には年額190兆円の経済効果と大きな雇用創出が見込まれます」と表明していた。脱炭素にはじまって、持続可能な社会の実現はあらたな経済成長を生み出す基盤ともなる。
そこに「ESG(Environment=環境、Social=社会、Governance=ガバナンス)」の観点や「ESG投資」、「SDGs(持続可能な開発目標)」も流行り言葉のようにやたらと目立つようになった。言ってみれば、菅政権の実力による。