指導者の重要性が高まっている。会社でもコミュニティでも、小さな組織でも変わらない。どういう姿勢で、何を伝えることが「その空間」のレベルを上げられるのか。

 そんな視点で書かれた『Football PRINCIPLES ~躍動するチームは論理的に作られる~』が評判を呼んでいる。同書で「指導者の理想を伝えすぎないこと」と、指摘する著者の岩政大樹氏は、鹿島アントラーズでJ1リーグ三連覇に貢献し、タイリーグ、そしてJ2ファジアーノ岡山、東京ユナイテッドなどでプレーをし、現役引退後は指導者としてユニークな道を歩んできた。

 果たしてその真意とは。

 同書刊行記念として開催されたオンラインイベント『PITCH LEVELラボ ver.2キックオフLive』で、自身が経験し、学ぶ中で気づいた「指導者像」について語った。

選手が選んだものがプレーモデルになる

――(参加者からの質問)本にも書かれているのかもしれませんが、理想のチームは具体的にありますか?

(理想のチームとして、ジェフ千葉を率いたときの)オシムさんの話と、ジュビロ磐田の「N-BOX」の話を書いていますが、それが(自分の)「理想のチーム」として「目指したいもの」ではないんです。

 例えば指導してきたチームの選手たちには、「みんなの一人ひとりの個性が際立ちながら、躍動感があって、湧き出てくるようなサッカーをしたいね」という話はしています。

 そのためにどうするかと言えば、僕はよくバリエーションという言葉を使うのですが、これがすごく大事だと思っていて。

 サッカーにおいては、つねに相手を見て判断していく必要があります。そのためには、バリエーションがないといけない。「うちのチームが攻勢のとき、相手がそれに対して動いたらどうするの?」というところまで設計しておかないと、バリエーションは生まれません。

 だから相手が自分たちの戦いに対応してきたときに、「こっちがあったでしょ?」「あっちもあったでしょ?」ということを伝えながら、あとは選手たちが選ぶことを促しています。

 そうやって選手が選んだものがチームのプレーモデルになっていくこと、それが躍動するチームの基本だと思うわけです。

 つまり指導者である僕のプレーモデルに沿って「(選手たちに)プレーしてください」という考え方ではなくて、僕は選手たちが選択肢やバリエーションをたくさん持てるような練習を作って、あとは選手たちがプレーモデルを作ってください、描いてくださいっていう作り方をしています。現時点での作り方ではありますが。