(作家・ジャーナリスト:青沼 陽一郎)
プロ野球、日本ハムファイターズの中田翔選手がチーム内で暴力事件を起こし、巨人へ電撃移籍した。そこに強烈な違和感を覚えるのは、かつての巨人のドラフト戦略の裏事情を知っていたからだろうか。
「移籍先が巨人」に違和感
中田がチーム内の同僚選手に暴力を振るったのは、東京オリンピック期間中の今月4日に、函館で行われた横浜DeNAとのエキシビションゲームの開始前のベンチ裏でのことだった。後輩選手を殴り、その選手から訴えがあったことから問題が発覚。先発出場していた中田は第1打席に立ったところで交替させられ、球場からも退場させられた。その後、球団が中田や周囲の選手、関係者から事情を聞いた上で11日、統一選手契約書第17条(模範行為)違反と野球協約第60条(1)の規定に該当するとして、1軍・ファーム全ての試合の無期限出場停止処分としたことを発表した。
しかも処分を受けて日ハムの栗山監督が「正直、このチーム(で復帰すること)は難しいと思っている」と語ったことが報じられると、同チームにいられない実態が明らかとなり、中田の今後の去就が俄然、注目の的となった。ところが、その直後の20日に巨人への無償トレードが決まる。スポーツ紙などの報道によると、栗山監督が巨人の原監督に電話で相談をして結果的に“救いの手”を差し伸べることになったようだ。巨人への移籍が決まった日、コミッショナーによる「出場停止選手」の公示も、処分解除となっている。21日には一軍登録され、代打で途中出場も果たした。
暴力は決して許されるべきものではない。無期限の出場停止処分が、暴行からわずか2週間余りでの解除と、移籍先が巨人であることに強烈な違和感を覚えたのは、いまさらながらに中田のドラフト当時のことが今回の一連の顛末と同時に頭に甦っていたからだ。