(山根 一眞:ノンフィクション作家)
1950年代に巨大アナコンダを撮影した幻の写真を入手し、その検証を進めているが、その作業は大蛇話を超えて、「情報の真贋の検証」はどう進めればよいかの試みになった。およそ70年前のたった1枚の謎に満ちた写真でも、そこから多くのことが読み取れることを実感している。
「私は見てます、100mの大蛇の写真を」と1979年のブラジル、アマゾン取材の際、ベレン市で聞いた1950年代に撮影されたというその幻の写真を、およそ半世紀を経て手にできた。プリントに焼き込んである文字の「写真館も現存している」(1990年代半ば当時)というので、これがオリジナル写真であることは間違いなかった。もっとも「100m」は記憶違いだったようで、写真には「40m」と記されていた。
100mが40mの記憶違いだったとしても、「40m」はとてつもない巨大さだ。
1958年に『図書新聞』や『文藝春秋』で展開されていたアマゾンの大蛇論争は、この写真をめぐってのものだったが、当時は単に「私は写真を見ている」という話が前提の紙媒体での「炎上」にすぎなかった。もしこの写真の現物があれば、大蛇論争は容易に決着がついたはずだった。そこで、私なりに「70年目の決着」をつけてやろうと目論んだ。
「長さ・胴体の直径」はフェイクの疑いが濃厚
この写真の下部には、「全長40m、80cm、重さ5t」というスケールの文字が焼き込んであり、私もそれに疑いをもたないままだった。だが今回、この写真を久々に見て「40m、80cm、5t」は誤りだと確信した。では私は、なぜ安易にこの数字を信じてしまったのか。
それは、「太さ80cmで40mの大蛇」と聞かされても、そのスケール感がイメージできないためなのだ。そこで、それを「実感」してみようと思った。