(姫田 小夏:ジャーナリスト)
中国の「人民日報」は7月5日、パキスタンのグワダル港で自由貿易区・北部ゾーンの起工式が行われたと伝えた。式に出席した同国のイムラン・カーン首相は「グワダル港が主導する『中国・パキスタン経済回廊』の協力は、パキスタンが必要としているエネルギー、インフラ、そして産業をもたらした」と述べた。
グワダルは、アラビア海に面するパキスタン南西部のバローチスターン州の港湾都市だ。もともと、シンガポールの港湾会社PSAがグワダル港を運営していたが、2013年に経営権を中国海外港湾ホールディングスに移譲。それ以来、中国が積極的に開発を行ってきた。
グワダル港はホルムズ海峡の出口にあることから、「中国は軍事的要衝として押さえたいのではないか」と言われていた。しかし、笹川平和財団上席研究員の小原凡司氏によると、「この港が軍事的に利用されているという明確な証拠はありません」と言う。確かに最近の中国の動きが示すのは、あくまでも商業的な観点からのグワダル港の利用推進である。