豪雨による土砂災害の現場(静岡県熱海市)で捜索・救助活動を行う消防隊員(2021年7月7日、写真:Abaca/アフロ)

 静岡県熱海市で大規模な土石流が発生するなど、各地で大雨の被害が相次いでいる。一方、千葉県八街(やちまた)市では、トラックが小学生の児童列に突っ込み、5人が死傷するという痛ましい事故が発生したほか、大阪市では住宅街の崖が崩れ、民間4軒が落下した。

 それぞれの事故は個別に発生したものであり、直接的な関連性はない。だが近年、インフラに関連した災害や事故を目にする機会が増えているのは、決して偶然とは言えない。日本のインフラ整備のあり方が限界に達していたところに、気候変動が重なり被害がより大きくなっている可能性が高いのだ。(加谷 珪一:経済評論家)

危険地域に住む人の数は増加している

 静岡県熱海市の伊豆山地区で発生した大規模な土石流では、2021年7月14日時点で11名が亡くなり、17人が行方不明、130棟の建物が流されるという極めて大きな被害をもたらした。今回、発生した土石流は、盛り土が原因である可能性が高まっており、そうであれば限りなく人災に近いということになるが、それでも大雨がトリガーになったことは間違いないだろう。

 近年は毎年のように各地で大雨による被害が発生している。日本列島に降る雨の総量そのものは、長期的に見て大きな変化はないものの、1時間あたり50ミリ以上の大雨が降る頻度は年を追うことに高まっている。日本列島では大雨が降りやすくなっており、これが被害を大きくしている可能性が高い。8月に入ると、日本列島には次々と台風がやってくるが、台風の被害も年々大きくなっている。

 台風や大雨による被害が増えている理由のひとつとされるのが気温の上昇である。全世界的に平均気温が上昇しており、太平洋では大型の低気圧が発生しやすくなっている。また、日本列島近辺でも上昇気流の影響が大きくなっており、大雨になりやすい条件が整っている。局地的な大雨が増え、台風も大型化しているという状況では災害が増えるのも当然といえば当然である。