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(池田 信夫:経済学者、アゴラ研究所代表取締役所長)

 静岡県熱海市の土石流の事故で、上流付近にあったメガソーラー(大規模太陽光発電所)で森林の保水力が落ちたのが原因ではないかといわれ、静岡県は調査に乗り出した。この因果関係は今のところ不明だが、危険な土地に建てられているメガソーラーは全国にも多い。

 民主党政権が再生可能エネルギーを促進するためにつくったFIT(固定価格買い取り)が動き始めて10年。政府は「グリーン成長戦略」の中で再エネを全電力の5~6割を占める「主力電源」にするという目標を掲げているが、それは可能なのか。

再エネ100%で電気代は4倍になる

 最大の問題は、熱海でも問題になった環境破壊である。毎日新聞の47都道府県を対象にしたアンケート調査では、37府県が「トラブルがある」と回答した。事業の差し止めなどを求めて起こされた訴訟は、全国で20件以上。2018年には、パネルが土砂崩れで損傷したり風に吹き飛ばされたりする事故が57件確認された。

 日本の電力のうち再エネで供給しているのは18%、そのうち水力を除く「新エネルギー」は10%である。電力をすべて再エネで供給してCO2排出をゼロにするには、今の5倍以上にする必要があるが、それは可能か。

 国立環境研究所によれば、設備容量500キロワット以上のメガソーラーは2020年で8725カ所、パネルが置かれた土地の総面積は大阪市とほぼ同じ計229平方キロに達している。日本はすでに平地面積あたりの再エネ発電量は世界最大だが、それでも電力量の1割しか発電できないのだ。

 それはエネルギー密度の低い再エネには、物理的な限界があるからだ。同じ発電量(キロワット時)で比べると、メガソーラーに必要な面積は火力発電所の2000倍以上。メガソーラーの年間発電量は1平方メートル当たり100キロワット時なので、日本の年間消費電力1兆キロワット時をまかなうには、1万平方キロの面積が必要である。